研究課題/領域番号 |
16H04601
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
冨田 栄二 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (80155556)
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研究分担者 |
河原 伸幸 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30314652)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 船舶海洋工学 / 燃焼 / 熱機関 / 光計測 |
研究実績の概要 |
(1)単一燃焼が可能な圧縮膨張機関における燃料噴射および上部からの可視化 今まで,火花点火機関の燃焼模擬用として圧縮膨張装置を利用してきた.この装置は,装置の横に設けられた混合気タンクとパイプで接続されている.弁が1つだけあり,最初,弁を開けたまま,シリンダ内と混合気タンクに,予め作成しておいた天然ガスと空気の完全予混合気を所定の圧力まで入れる.その後,弁を開けた状態で,電動モータによって,圧縮膨張装置を駆動し,一定回転になったとき,下死点で弁を閉じて,予混合気を圧縮する.圧縮上死点前のある時期で少量の軽油を噴射して自着火させ,火炎伝播を行わせる.燃焼室の壁面温度は,何箇所かに制御付きヒーターを取り付けることによってほぼ一定の温度にする.具体的には,燃料噴射弁および可視化窓付きシリンダヘッドの設計および製作,燃料噴射システムの設置などの準備であった.実際に上部あるいは下部から可視化をすることはできた.また,軽油の噴射に関しても微量噴射に対応することができた.しかし,PREMIER燃焼を実現するには至っていない.シリンダ内圧力がまだ低い状態であることなどが課題であると考えており,今後,解決に向けて実験を進める予定である. (2) エンドガス部における自着火過程の簡略化素反応シミュレーション ワークステーションを用いて,3次元CFD解析を熱機関に応用して,ガス流動および燃焼過程のシミュレーションに関する研究を実施している.これに化学反応を組み込んで計算する.簡略化モデルがいくつか提唱されているが,最初の軽油による自着火の後,火炎伝播をして最後の自着火モデルまで扱った研究は少ない.エンドガス部における自着火を簡略化素反応モデルで表現することができるようになった.ただし,まだ数値的にはまだ実験値と異なることが多く,今後,精度を高めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一燃焼が可能な圧縮膨張機関における燃料噴射および上部からの可視化は可能になった.今までは,燃焼の初期は火花点火であり,燃焼室中央に軽油のパイロット噴射が可能なディーゼル燃料噴射弁を設置することができるように,燃焼室のヘッドの再設計,再製作を行った.また,圧縮比の変更も行い,かなりの改造になった.これからPREMIER燃焼の生じる実験条件を探索し始めることになる. また,シミュレーションに関しては,ワークステーションを用いて,3次元CFDによって,燃焼のシミュレーションを行っている.燃焼後半での圧力および未燃ガス温度が高くなってきたあたりのエンドガス部における自着火が可能になり,化学反応計算がきちんと行えていることが確認できた.今後,計算精度を向上させていくことになる.
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今後の研究の推進方策 |
(1)PREMIER燃焼を実現するための実験条件の把握:種々のパラメータを変化させて,PREMIER燃焼の生じる実験条件を把握することに努める.燃焼の始まりからエンドガス部の自着火が生じるまでの圧力および未燃焼部のガス温度の履歴が重要であると考えられる.当量比,酸素濃度,圧縮比を変化させる.圧縮比はシリンダ内圧力および未燃ガス温度履歴に関係する.当量比としては,火炎伝播が可能な範囲で,できるだけ希薄な条件まで実験を行いたい. (2)自着火現象の超高速度撮影:超高速カメラを利用して自着火現象を高速度で捉える.ピストン表面にミラーを貼り付け,シュリーレン法を利用して自着火部の燃焼の拡がりの様子を自着火部と未燃ガス部の密度変化を利用して捉える.申請者は,以前,別の実験で光源や凹面鏡を用いて,シュリーレン法により火炎の撮影をした実績があり,種々のノウハウを有している.ノックになる場合には,以前の結果から自着火部分の広がり方が音速程度まで速くなっており,圧力波が発生するために,圧力振動が生じる.PREMIER燃焼の場合には,自着火部の広がり速度が火炎伝播速度と同等か,それよりも速いのか興味がある. (3)エンドガス部における自着火過程の簡略化素反応シミュレーション:3次元CFD解析を熱機関に応用して,ガス流動および燃焼過程のシミュレーションに関する研究を実施している.これに化学反応を組み込んで計算する.簡略化素反応モデルを検討もしており,エンドガス部における自着火を簡略化素反応モデルで表現することができるようにしするとともに,実験値との整合性を高めたい.
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