研究課題/領域番号 |
16H04606
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
江原 由泰 東京都市大学, 工学部, 教授 (40308028)
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研究分担者 |
瑞慶覧 章朝 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (00601072)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ディーゼルエンジン / 排ガス / 窒素酸化物 / 微小粒子 / 電気集塵 / プラズマ / バリア放電 |
研究実績の概要 |
本研究では舶用ディーゼルエンジンの排ガス処理技術として,高濃度な微粒子(PM)と窒素酸化物(NOx)を高効率に除去することを目的とした。高濃度なPMを捕集する際には,一度捕集した粒子が電極から飛散する再飛散現象が生じる。この問題に対して,再飛散を抑制するホール型電気集塵装置(ESP)を独自に開発し,低濃度となったPMとNOxを触媒により同時に除去するシステムの開発を目指している。ホール型ESPは,集塵電極にホールを開けたESPのことである。粒子はクーロン力やコロナ放電により生じるイオン風の影響を受け,ホール内に誘導される。このとき、電界がゼロの捕集空間に粒子を誘導することで,再飛散現象の抑制ができる 。 本年度は,ホール型ESPにおける粒子挙動シミュレーション解析や平行平板電極を有するホール型ESPの開発を行い,基礎特性の抽出と性能評価を行った。また,プラズマ・触媒ユニットとしてバリア放電と触媒を併用し,捕集したPMを低温でも燃焼効率の高いPM除去装置の開発を行った。以下に得られた結果を述べる。 1.イオン風のシミュレーション解析において,主流体速度を変化させて流体解析を行った。主流体速度が遅い場合,ホール内へ入る流れが形成され,主流体速度が速いと,ホールへの流入が少ない傾向となった。2.針対平板電極のモデルにおいて,粒子画像流速測定法(PIV解析)によりESP内の再飛散粒子を可視化することができた。また,集塵時間が長いほど再飛散粒子が多く発生した。3.平行平板ホール型ESPを構築し,針とホールの最適位置や集塵率に対する放電電流特性などを確認した。4.バリア放電と触媒を用いてPM燃焼を行い,両者を併用することがPM燃焼に対して有効に作用することを確認した。また,200~300℃の温度範囲では,PM燃焼量は放電電力量に依存していた。 以上の成果は学術雑誌に掲載し,学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
舶用ディーゼルエンジンから排ガス処理するシステムの技術として,ホール型ESPの要素技術であるイオン風のシミュレーション解析を行った。主流体速度とホール内に流入する流れについて解析し,ホール電極に取り込まれる粒子の挙動を明らかにした。また,PIV解析により,再飛散現象の可視化に成功した。そして,高濃度なPMを捕集するホール型ESPを構築し,基礎特性の抽出と性能評価を行い,再飛散抑制効果を確認した。プラズマ・触媒ユニットにおいては,PMの燃焼確認と,DBDリアクタによる注入電力や処理ガス温度とPM燃焼特性の抽出を行った。これらの要素技術を再検討し,実用化に向けたシステムの構築準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ホール型ESPの集塵プロセスを検討し,PMの集塵効率の向上を目指す。集塵プロセスのシミュレーション解析を継続して行い,高風速処理に対応する放電ギャップ長やホール径,開口率などの構造パラメータを抽出する。また,PMに及ぼすガス流やイオン風,クーロン力の影響を,粒子挙動の可視化によるPIV解析し,最適な印加電圧や電極間隔,電流密度などを検討する。 昨年度に製作したホール型ESP において,PM集塵試験で得られたノウハウやシミュレーション解析,PIV解析をベースに最適化したNOx・PM浄化処理システムを製作する。その後,同様のPM集塵試験を行い,ESP性能の再評価を行う。 プラズマ・触媒ユニットにおいては,PM燃焼における触媒活性の低温度効果を検証し,プラズマ・触媒における重畳効果の確認と有効性を確証する。そして,PMの除去のエネルギー効率向上により,経済性・実用性の両面から比較検討を行う。
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