研究課題/領域番号 |
16H04610
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
井上 朝哉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部探査センター, 主任技術研究員 (10359127)
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研究分担者 |
田原 淳一郎 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30280366)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水中非接触給電 / 船上掘削データ / ドリルパイプ |
研究実績の概要 |
地球深部探査船「ちきゅう」において、掘削機器の統合的制御・監視を行う装置から、リアルタイムで船上掘削データを取得する装置の構築を行った。掘削機器は各々、PLC(Programmable Logic Controller)を有しており、更に、それらを統合的に制御・管理する上位制御PLCがある。運用安全面でアクセス領域に懸念が生じるため、仮想サーバを構築し、それを介して、上位制御PLCのアクセスを行う手法を適用した。 掘削データを用いたドリルパイプ強度監視手法の構築に向けて、最大応力および疲労の観点からのドリルパイプ強度検討手法の検討を行った。最大応力の観点では、作業中に生じる多岐に亘る応力を分類し、その畳重による最大応力算出手法の検討を行った。また、疲労強度の観点では、船体動揺を加味した応力の発現確率をもとにした累積疲労被害度算出手法の検討を実施した。 ケーブル内蔵ドリルパイプ開発に向けて、ケーブル経路を含めた概念検討を行うと共に、水中非接触通信・給電に関する基本試験を実施し、その減衰特性の考察を行った。その際、ドリルパイプへの適用を鑑みて、鉄環境において問題となる鉄の透磁率と損失係数に起因する非接触給電特性低下、および海水環境において問題となる塩化ナトリウムのイオン伝導による電界への影響に起因する性能低下の影響の考察も行った。対のコイルにコンデンサを直列に配した共振器では、単段での減衰は比較的小さいが、ドリルパイプに適用した場合、つまり、多段となった場合は減衰が大きく新たな手法考案の必要性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は早い時期に新掘削制御装置における掘削データの通信確認を行い、新掘削制御装置対応のデータ取得装置の開発を行う予定であったが、「ちきゅう」の運航スケジュールの変更により、掘削パワー制御システムの換装の時期が変更となり、それに伴い、新掘削制御装置における掘削データの通信確認の一部に遅延が生じた。しかし、掘削パワー制御システム換装後に速やかに通信試験を行い、全体計画に影響を及ぼすような遅延を生じることなく、掘削データ取得装置の構築を行った。 掘削データを用いたドリルパイプ強度監視手法の構築に向けての、最大応力および疲労の観点からのドリルパイプ強度検討手法の検討においては、計画通りに遂行している。 ケーブル内蔵ドリルパイプ開発に向けての中核となる水中非接触通信・給電に関しては、実験によりその基本特性の把握を行った。実験を行うに当たり、事前のシミュレーションにより共振器設計を行うことで、効率的な準備を行い、水中環境のみならず、ドリルパイプへ適用した場合に問題となる鉄環境の考察も実施した。
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今後の研究の推進方策 |
掘削データ取得装置開発に関しては、掘削機器が作動した状態での長期間の連続運用に向けた信頼性確認試験の実施が不可欠であり、科学掘削航海期間中に長期作動試験を実施する。また、掘削データを用いたドリルパイプ強度監視システムや、掘削地層把握を進めるためには、掘削データを入力データとする計測融合演算を行う必要がある。そこで、汎用的プログラム言語であるMatlabでの演算を想定し、掘削データのMatlab Libraryとしての読み込みを可能とするインターフェイス・ソフトの構築を進める。 掘削データを用いたドリルパイプ強度監視システムや、掘削地層把握を進めるためには、各々の推算手法の構築が必要であり、数値解析手法の構築を早期に進める。また、過去の航海データの活用や、先進的な情報科学手法の適用などにより、計画の進展を図る。 ケーブル内蔵ドリルパイプ開発に向けては、初年度に得た非接触給電特性を鑑みて、多段式非接触給電で十分な性能を得るための新たな非接触給電手法の考案を進める。更に、給電に加えて通信も行う、多段式非接触給電・通信同時伝送の基本特性の把握を行う。
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