研究課題/領域番号 |
16H04611
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
藤原 義弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 分野長代理 (20344294)
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研究分担者 |
土田 真二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術主幹 (30344295)
巻 俊宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (50505451)
河戸 勝 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術主任 (50533866)
福場 辰洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術研究員 (80401272)
後藤 慎平 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (90772939)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオプシー / 深海 / トップ・プレデター / 非致死的 / 自律的 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は深海トップ・プレデター研究に道を開くため,深海域の大型生物から非致死的に生体試料を採集するための全自動 in situ バイオプシーシステムを開発することである. 今年度はシステムに全ての装置類を組み込み,海域での動作試験を実施した.まず装置類を搭載するフレームを設計・製作するとともに,バイオプシー針射出用ランチャー4本を整備した.このフレームにメインカメラ,バイオプシー針射出用ランチャーおよび安全対策装置,投光器,レーザー照射器などを組み込み,水槽での動作試験を実施した.その結果,ランチャーからバイオプシー針を正常に射出できることを確認した.また安全装置に関する圧力試験を高圧水槽内で実施したところ,気中でバイオプシー針の射線を塞ぐ安全対策ボールの挙動が不安定であり,装置内でジャムが発生し,十分な安全性を確保できないことが判明したことから,新たにピストン昇降式の安全対策装置を開発し,システムに組み込んだ.この安全装置を用いた加圧減圧試験を高圧実験水槽内で実施し,良好な試験結果を得た. そこで神奈川県立海洋科学高校の練習船「湘南丸」を用いて,駿河湾で現場海域試験を11月に実施した.まずバイオプシー針を装填しない状態でシステムの健全性の確認を行った.その結果,海底の濁りがシートレーザーによる光切断法を用いた生物の認識に悪影響を与え,対象生物を十分に認識できないことがわかった.また安全装置の一部の強度不足により,試験中に亀裂が発生したことから,今年度の海域試験ではバイオプシー針の実装を見送り,レーザー画像の取得を行った.その後,海洋研究開発機構岸壁において,生物認識部アルゴリズムを改良するためのデータの取得,システム全体の重量バランスの見直し,レーザー光の波長の変更,メインカメラの換装のための準備,システム全体の軽量化を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,システムをフレームに組み込み,現場海域試験を実施できたため.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に実施した海域試験結果を受け,まずシステムを搭載するフレームデザインを見直し,改良する.現フレームは堅牢性を重視した結果,全体重量が大きくなり,本システムを搭載できる船舶が限定され,調査効率が著しく低下する.よって比較的小型な船舶でも搭載可能なように小型化,軽量化を図る.またシステム構成要素に変更があったため,前後左右の重量バランスが悪いため,フリーフォールでの設置回収時にトラブルが発生する可能性がある.そこで音響切り離し装置や錘,浮力材の位置や総量を調整する.新フレームの完成後,海洋研究開発機構岸壁や実験水槽などを利用して模擬生物を用いた生物認識試験を行い,対象生物に対するレーザー照射画像を可能な範囲で多数取得する.これらの画像を解析し,対象生物の認識率を高めるためにアルゴリズムを調整する.また昨年度の実海域試験において,海水中の濁度が生物の認識に大きな影響を与えることが判明した.そこで濁度の高い条件下でも確実に対象生物を識別できるようシステムを調整する.システムのメインカメラについては計画当初に比べ,小型,軽量,高画質かつ低消費電力のカメラが利用できることが判明したことから換装し,小型軽量化を図る.また投光器については,別途実施中のベイトカメラ調査の結果から,より長波長の光源を利用することが望ましいことが判明したため,換装する.射出部の安全装置のうち,安全対策ボール部分については,ボールを保持する部位の材質に問題があったため,強度の高い材質に変更する.また安全対策ボール部分の機構についても見直しを行い,安全性を高める. 以上の改修,改良を加えたシステムを海中に投入し,自動認識による非致死的な試料採集を試みる.またこれらの成果を学会発表,研究論文などを通しじて報告する予定である.
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