研究課題/領域番号 |
16H04616
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
沖部 奈緒子 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30604821)
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研究分担者 |
平島 剛 九州大学, 工学研究院, 教授 (00175556)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 都市鉱山 / バイオリーチング / ベースメタル / レアメタル / 貴金属 |
研究実績の概要 |
本申請では、日本が多く蓄積する都市鉱山から主要ベースメタル・レアメタル・貴金属を再資源化するために、バイオハイドロメタロジーを学問ベースとした低コスト・低環境負荷型のクリーンな新規バイオ処理プロセスを開発することを目的とした。以下に前年度までの実績概要を示す。 I.「前処理&分析」:廃基板・廃触媒試料の各浸出手法の方針決定に必要な情報(金属元素・金属存在形態)を取得した。これら一連のデータに基づいて下流にてターゲットとする金属種を決定した。 II.ベース/レアメタル浸出:上記分析結果に基づき、廃基板に関しては酸化的バイオリーチング、廃触媒に関しては、微生物代謝物としての有機酸リーチングに焦点を当てた。常温において、廃基板からベースメタルである銅(Cu)の浸出、廃触媒からレアメタルであるランタン(La)の浸出が進んだ。これらの条件検討を引き続き行い、最大の効率を示す最適条件を見出す予定である。 III. バイオ-ケミカルハイブリッド型貴金属リーチング:全く新たなアプローチとして、「Bio-Thiourea法」の適用可能性を模索した。従来の化学的Thiourea法と比較し、かなりの低Thiourea濃度および低Fe3+濃度条件において微生物学的反応の優位性が認められつつある。さらなる条件検討および再現性試験を進めている。 IV. 貴金属ナノ粒子生成:最終的には都市鉱山浸出液からの貴金属ナノ粒子生成を目的としている。試薬を用いた基礎試験においては、強酸性溶液からのプラチナ(Pt)やパラジウム(Pd)のバイオナノ粒子生成に成功している。さらに、金(Au)試薬を用いた場合もバイオナノ粒子としての回収可能性が示されつつある。今後は、更に浸出剤共存下における試験を進め、最終的には実浸出液を対象とした試験を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では、1連のプロセスとして常に前後を意識した合理的な実験計画を立て、得られた成果をもって1つ1つのピースを繋げ、多ステップから成る1つの包括的バイオ処理プロセス構築を目指していく。この中で、個々のステップについて結果が得られつつあり、おおむね順調な進展であるといえる。新年度以降、これらの再現性試験および条件最適化を経た上で、最終段階として1連のプロセスを流した実験を組み立てていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
〇ベース/レアメタル浸出:廃基板に関しては酸化的バイオリーチングによるCuの浸出、廃触媒に関しては、微生物代謝物としての有機酸リーチングによるLaの浸出を試みている。廃基盤に関しては、特に反応初期のpH上昇が問題点としてあるが、pHを安定化するための条件検討、pHコントロール型バイオリアクターの使用も含め、条件検討を引き続き行い、最大の効率を示す最適条件を模索する。 〇バイオ-ケミカルハイブリッド型貴金属リーチング:微生物学的反応の優位性を最大限に引き出す条件について、引き続き検討が必要である。従来の化学的Thiourea法と比較した場合、ThioureaやFe3+濃度がかなり低い時に微生物学的反応によるリーチング効果が現れつつある。引き続き再現性試験および最適Thiourea/Fe3+濃度を詰めていく。 〇貴金属ナノ粒子生成:金バイオナノ粒子生成における機構の解明、電子供与体濃度によるサイズコントロールの可能性について詰めていく。さらには、浸出剤(ここではThiourea)共存下における試験を進め、最終的には実Thiourea浸出液を対象とした試験を行っていく。
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