研究課題/領域番号 |
16H04617
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
近藤 正聡 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435519)
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研究分担者 |
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
相良 明男 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (20187058)
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
松村 義人 東海大学, 工学部, 教授 (60239085)
八木 重郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70629021)
佐々木 一哉 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70631810)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液体ブランケット / 液体金属 / 電気化学インピーダンス / 腐食 / 機能性被覆 / 自己修復 / 核融合炉 / 酸化被膜 |
研究実績の概要 |
機能分担型多重界面被覆は、核融合炉の液体ブランケット等の高温エネルギープラント特有の複数の課題(腐食・水素透過抑制・電気絶縁)を一度に解決可能な革新的な技術である。特にこの界面構造が有する機能自己修復性及び自己診断性は、プラントの長寿命化を達成しうる特筆すべき機能である。 申請者らは、熱力学的に安定なZrO2/Zr構造に注目し、高温大気環境下における被膜の成長挙動、高温液体金属環境下における耐食性や水素透過抑制機能について、核融合科学研究所と東海大学と協力して研究を実施した。その結果、600℃の溶融鉛(Pb)に対する化学的安定性と、優れた水素透過抑制機能が確認された。また、この被膜は緻密ではあるものの、高温条件下でクラックを発生する事が明らかになった。次に、このZrO2/Zr構造に対して、溶融Pb環境下で電気化学インピーダンス測定を実施し、得られたナイキストプロットをクラック等の欠陥を含めた等価回路モデルにより評価した。その結果、ナイキストプロットから膜厚などの基礎的な情報を精度よく評価可能な事に加え、被膜内に発生する空孔や微小なクラックを得られたナイキストプロットの静電容量成分から評価可能である事がわかった。また、被膜内のクラックが連結していく挙動を、直流抵抗成分の評価から可能である事を世界に先駆けて明らかにした。またモデル評価の結果から、これまで限定的であった高温条件のZrO2の電気化学物性を明らかにする事にも成功した。 水晶振動子質量計測装置を新たに導入し、その基礎的な動作特性を明らかにした。更に、核融合炉液体ブランケット環境下への適用に向けて、試験部の高温化に関する研究を実施した。現在、高温条件および液体金属環境下用の試験部の試作を進めている。 以上の研究成果については、日本機械学会誌(和文誌, 査読付き)に投稿して掲載された他、国内の学会にて成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、本研究課題をスムースに進められた理由は二つある。一つは、ZrO2/Zrが予想 以上に緻密な組織を有していたため、高温の液体金属環境下耐食性試験や水素透過試験等において破壊する事なく機能した為である。もう一つは、この優れた堅牢さが、電気化学インピーダンス測定に対しても威力を発揮し、溶融Pb中においても堅牢さを保ち電気的な短絡を生じる事なく、400時間の間、継続的に信号を獲得できた事である。高品位な電気化学測定結果を被膜構造の大きな変化はない状態で連続して取得できた。これにより、被膜内に発生する微細なクラックや空孔、更にはこれらの連結による大型クラックの発生などを電気化学的な信号の変化として評価する事ができた。 本来の核融合炉液体ブランケットの燃料増殖材として用いられる鉛リチウム合金の高純度の物の調達が課題ではあったが、最近の量子科学研究開発機構との共同研究により合成されたものが使用可能な状況にある。これにより2年度目以降で、より実環境下に近い低酸素ポテンシャル、強還元性雰囲気での試験の予定を計画しやすくなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに優れた成果が得られているZrO2/Zr構造に加え、研究テーマに学術的な広がりを持たせるために、若干性能が劣るY2O3/Y構造についても平行して同様の研究を進める。これにより、前者が緻密な組織を有するがゆえに生じなかった溶融金属条件下における被膜構造の大規模な破壊などについて、後者の構造の試験で評価する。 基礎的な特性が得られつつあるZrO2/Zr構造に関しては、当初の予定通り、液体金属環境下における耐食性向上に特化した肉厚な酸化物溶射膜を積層し、その高温時挙動を調べる研究を進める。 本研究課題のもう一つの重要項目である水晶振動子質量計測法については、使用可能温度上限がブランケットの運転温度よりも高いものの、水晶振動子を固定するセンサー部構造を電気的に絶縁しながら気密がとれる設計にしなければいけない点がポイントである。現在、セラミクスシーリング材を用いたセンサー構造の試作を進めており、製作が完了し次第、低融点の液体合金を用いた実験を開始する予定である。 本研究では、液体ブランケット環境を対象として来たが、最近特に注目を集めつつある液体ダイバータ(冷却材は溶融錫)についても対象範囲内として、研究範囲を拡大したい。
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備考 |
レーザー研シンポジウム2016 ベストポスター賞(2016.4), 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター共同研究専門委員会
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