研究課題
平成28年度においては、当初の計画通り、主にダストホッパーの設計と製作、ダスト放出および、ダスト源となる堆積層を細かく砕くために使用する真空対応ピエゾアクチュエータ専用のピエゾコントローラーを購入した。その他、当該研究計画に関連する研究成果を第22回制御核融合装置におけるプラズマ表面相互作用国際会議(2016年5月30日~6月3日、ローマ・イタリアにて解析)および、第11回核融合エネルギー連合講演会(2016年7月14日~15日、九州大学伊都キャンパス)にて発表した。ダストホッパーを製作するにあたっては、まず大型ヘリカル装置(LHD)に設置されている2台の試料駆動装置(4.5-Lおよび、10.5-L)の現状調査を実施して、当初の研究計画をどちらの駆動装置で実施するのが有利なのか総合的に判断した。その結果、10.5-Lのほうが有利であることが分かったので、ダストホッパーを試料駆動装置(10.5-L)に設置するのに最適な形状・仕様とした。LHDの長時間放電プラズマがダイバータ領域からの大量のダスト放出によって突然停止している。そのため、まずは、ダスト放出面に形成される堆積層(ダスト源)を系外に排出できることを実証するのが先決であると判断し、ダストホッパーの形状を最適化させた。本装置は、LHDのダイバータプラズマに接近させるため、磁場の影響を受けにくいSUS316で構成するようにした。また、ダスト放出面もSUS316の円盤とし、その背面をピエゾアクチュエータが押し出す構造とした。ダスト放出面上でピエゾアクチュエータによって細かく砕かれた堆積層(ダスト)はダストホッパーの下部の脇に設けられた小型のダストポケットに集められるようにした。今後は、このダストホッパーのダスト放出面に模擬的な堆積層を塗布して、その性能をテストスタンドにて確認するとともに、更なる改良を施す計画である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、平成28年度においては、主にダストホッパーの設計と製作を行うことになっていた。平成28年度末までにこの計画は達成されたので、現在までの進捗状況の区分としては、「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。本装置(ダストホッパー)の性能評価と更なる改良は今後引き続き実施していく予定であるが、大型ヘリカル装置(LHD)では平成29年の末から重水素実験開始され、本装置の放射化(プラズマ中の核融合反応に伴って発生する中性子の影響)の影響と、構成機器(主にピエゾアクチュエータとコントローラー)の放射線(主に中性子線とガンマ線)に対する影響に新たに注意する必要が出てきた点に留意しなければならないと考えている。平成29年度以降の機器設計・製作および、研究計画の遂行に当たっては、この放射線が機器に与える影響について十分に配慮したいと考えている。
平成29年度以降は、試料駆動装置(10.5-L)の先端部に今後設置する予定のダストホッパーの状態を至近距離から観測するための真空対応イメージファイバーを設計・製作する計画である。このイメージファイバーを試料駆動装置の可動ロッド内部に敷設・設置するために、あらかじめ平成28年度中にプラスチック製の模擬的なファイバーを敷設する作業を行った。その結果、敷設作業には大きな問題は無いことが確認され、イメージファイバーの最適な長さと径の大きさを求めることができた。また、核融合科学研究所の倉庫(機材庫)において現在使用されていないイメージファイバー(旧LIDヘッド監視用)が存在することが分かったので、今後、このイメージファイバーを有効に活用することを検討している。平成29年度の当初に、このファイバーを製作した会社(三菱電線工業)に送り返して、その健全性と有効性を確認する作業を行っていただく予定である。本ファイバーの健全性が確認され次第、試料駆動装置の可動ロッド内部に敷設するために、ファイバー先端部の形状と仕様の最適化を施す(長さの変更、細径化など)。その後、平成29年度の末くらいに可動ロッド内部に敷設する作業を行う計画である。また、ダストホッパーの駆動と観測に必要となる各種ケーブル、光学機器の設計と製作および、試料駆動装置への設置作業も合わせて実施する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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