研究課題/領域番号 |
16H04621
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
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研究分担者 |
田村 仁 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20236756)
嶋田 雄介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20756572)
田中 照也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30353444)
菊池 章弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (50343877)
小黒 英俊 東海大学, 工学部, 講師 (90567471)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合 / Nb3Sn線材 / 高強度化 / 固溶強化 / 臨界電流特性 |
研究実績の概要 |
Cu-Sn-Zn三元系合金母材を用いたNb3Sn線材の極細多芯線材加工の成功を受けて、Cu-Sn-Zn三元系合金による高強度化の度合いを検証するために、高磁場下での一軸引張変形による臨界電流特性及び臨界磁場特性の変化について詳細に検討した。比較として、市販のCu-Sn二元系合金母材を用いたNb3Sn極細多芯線材も同様の測定を実施した。 引張変形に伴う応力-ひずみ曲線から見積もられるCu-Sn-Zn三元系合金線材のヤング率及び0.2%耐力は、Cu-Sn二元系合金母材を用いた線材よりも高くなる傾向が見られた。これはNb3Sn相生成熱処理後の合金へのZn固溶が影響していると考えられる。 一方、いずれのNb3Sn線材の臨界電流特性は、引張変形に伴って向上する傾向が見られた。これは、液体ヘリウム冷却によって線材内部に発生した圧縮ひずみが緩和されたためであると考えられる。その後引張変形をされながら最大の臨界電流特性が得られる引張歪量は合金組成の初期Zn量の増加に伴って高ひずみ量にシフトした。このように、合金母材へのZn固溶という簡便な手法でNb3Sn線材の高強度が為された。しかしながら、合金組成においてSn量とZn量の間にはトレ-ドオフの関係があり、臨界電流特性と高強度化の観点での最適化が必要であることが示唆された。 合金母材の三元組成化によってNb3Sn線材の高強度が可能であることから、更なる三元組成化の最適化を目的に、固溶強化機構においてZnよりもより効果的な溶質元素の探索が重要であり、Inに注目した。Inは銅における固溶強化の溶質元素としてZnよりも効果的であることが知られており、Cu-Sn-In三元系合金の溶製とNb/Cu-Sn-In前駆体線材を作製した。Nb3Sn相拡散生成熱処理後の母材にZnと同様に均質に残留することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Cu-Sn-Zn三元系合金母材を用いたNb3Sn極細多芯線材について、通常の工業ラインで長尺線材加工を成功し、Cu-Sn-Zn三元系合金母材の工業生産性を確認した。加えて、Cu-Sn-Zn三元系合金母材を用いたNb3Sn極細多芯線材の超伝導特性や機械特性を評価することで、合金母材へのZn固溶という簡便な手法でNb3Sn線材の高強度化を実証できた。さらに、三元組成化の最適化を目的に、Znよりもより効果的な溶質元素の探索が開始されているからである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、種々のCu-Sn-In三元系合金の溶製とNb/Cu-Sn-In前駆体線材を作製し、微細組織や超伝導特性におけるInの効果を明らかにする。そして、Cu-Sn-In三元系合金を用いたNb3Sn極細多芯線材を工業ラインで試作を加速する。
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