研究課題
磁場閉じ込め核融合実験装置LHDにおいて、摂動磁場を印加したとき、周辺部での放射損失およびダイバータ熱負荷への影響について調べた。今年度の成果の概要は以下の通りである。1. 摂動磁場強度の増加に伴い、デタッチメント遷移する密度閾値が下がることが明らかになった。一方で、放射損失の量およびダイバータへの粒子束の減少の度合いについては、摂動磁場強度にほとんど依存しないことがわかった。この結果は予想と違うものであり、その原因としてプラズマの応答による摂動磁場の増幅が考えられるが、詳細については現在のところ不明である。2. 不純物の発光分布について、磁場配位、プラズマパラメータを変化させた場合の系統的なデータ収集を行った。周辺部のストキャスティック磁場領域が広くなるにつれて、発光分布が空間的に広がり、また高荷数の発光強度が減少することがわかった。さらに詳細な磁場構造との比較を行うためにトモグラフィー解析の手法の開発をおこなった。今後この手法を用いて磁場構造との詳細な比較を進める。3. 不純物スペクトルのドップラーシフトから不純物のフロー速度について評価を行った。すべての密度領域で不純物はダイバータに向かって約20km/sの速度で流れていること、およびその速度はプラズマ密度の増加とともに微増することがわかった。また、重水素プラズマの場合には軽水素プラズマに比べて速度が1.4~2倍ほど遅いことがわかった。これは現行の輸送モデルから、水素同位体の重量比に起因するものであると考察される。また、低密度領域では現行のモデル予想と違う振る舞いを見せており、モデルの修正が必要であることが示唆された。これらの成果は磁場閉じ込め装置における周辺部磁場構造と放射損失、不純物輸送の関係を解明するうえで重要な基礎データであり、今後の数値シミュレーションとの比較による現行モデルの検証に十分なデータが得られた。
3: やや遅れている
実験の遂行と系統的なデータ収集はほぼ順調に進んでいるが、データ解析についてはそのデータ量が多く、また解析手法が多岐にわたるため、多くの時間が必要となっている。このため、数値シミュレーションとの比較が若干遅れ気味である。
これまでに得られた実験データと数値シミュレーションと比較を更に進めて現行の輸送モデルの検証を行う。特に、モデルのフリーパラメータである輸送係数についてスキャンを行い、実験を最も良く再現できるパラメータ領域を探索する。昨年度までに磁化プラズマに特化したトモグラフィー解析手法を開発した。これを用いて3次元磁場構造と不純物発光分布との詳細な比較を行う。ダイバータ熱負荷分布と発光分布の関係について解析をすすめる。これまで、ダイバータ熱負荷計測用のプローブデータ解析プログラムの整備を行ってきており、今後、解析のスピードアップが期待される。また、これまでの系統的な実験で、摂動磁場を印加してデタッチメント遷移した後の放射損失量・ダイバータの熱負荷(粒子負荷)の減少量が摂動磁場の強度にほとんど依存せず一定の値をとることがわかった。今後、プラズマ応答の磁気計測データの解析をすすめることでその原因を追究する。これまでの解析は炭素不純物に限られてるが、今後他の不純物種(ネオン、アルゴン、クリプトンなど)についても可能な限り実験と解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件)
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