研究課題/領域番号 |
16H04624
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
星野 毅 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 ブランケット研究開発部, 上席研究員(定常) (80370469)
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研究分担者 |
町田 昌彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主席 (60360434)
佐々木 一哉 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70631810)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核融合炉 / トリチウム / リチウム / リチウム6 / 同位体分離 / イオン伝導体 |
研究実績の概要 |
核融合炉の燃料として必要なトリチウムは、核融合炉ブランケット内に装荷されるトリチウム増殖材料中のリチウム6(6Li)と中性子との核反応により生産する。しかしながら、天然のリチウムには6Liが最大で約7.8%(残りはリチウム7(7Li))しか存在せず、核融合炉の定常運転に必要なトリチウム量を確保するためには、6Liの存在比を約90%に濃縮したリチウムが必要となる。そこで本研究では、リチウムイオン伝導体を6Li分離膜とした新たな同位体分離法の技術開発の一環として、イオン伝導体中における6Liと7Liの同位体拡散メカニズムを計算シミュレーションにより探索した。 本シミュレーションでは、第一原理計算等を用い、イオン伝導体中における6Li及び7Liの拡散定数比の計算を行った。一例として、LiTi2O4(スピネル型結晶構造)中の6Li及び7Li拡散定数比を計算した結果、1.05~1.06程度の値となり、理論的な最大値と考えられる質量比の平方根値である約1.08より低いものの、リチウムイオン伝導体を6Li分離膜とした同位体分離法が実現可能であることを示唆する計算シミュレーション結果が得られた。 また、イオン伝導体Li0.29La0.57TiO3(LLTO)を6Li分離膜として用いた際のリチウム6同位体分離係数を実験より求めた。7日間の分離試験の結果、回収液中の6Liの割合は天然比の7.8%を大きく上回る約8.1%となり、同位体分離係数は最大で1.04と、Liイオン伝導体の組成は異なるものの、計算シミュレーションにて求めたLiTi2O4の拡散定数比(1.05~1.06)に近い値を得ることに成功し、平成28年度の研究計画を達成した。 次年度(平成29年度)はより6Liの分離効率に優れた実験条件の探索を行うとともに、最終年度(平成30年度)に行う装置の多段化に必要なデータベースを構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核融合燃料製造に必要なリチウム6(6Li)同位体の分離回収法として、リチウムイオン伝導体を6Li分離膜とした新たな同位体分離技術の可能性を、スーパーコンピュータにより探索した。その結果、リチウムイオン伝導体の種類により同位体拡散比はなるが、イオン伝導体LiTi2O4の場合は1.05~1.06程度の同位体拡散比が得られる可能性を示唆する結果が、計算シミュレーションより得られた。 また、イオン伝導体としてLi0.29La0.57TiO3(LLTO)を用い、6Li同位体分離試験を行った結果、6Li同位体分離係数は最大で1.04と、海外にて実用化されていると考えられる水銀アマルガム法の6Li同位体分離係数1.06と同等の高い値が得られ、平成28年度の研究計画を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究成果では、1 回の試験における同位体分離係数は最高で1.04のため、目標とする約90%に濃縮したリチウム6(6Li)を得るためには、多段型の6Li 同位体分離装置が必要になる。 よって平成29年度以降は、より高い6Li同位体分離係数が得られるイオン伝導体の開発、多段型6Li 同位体分離装置の設計を検討するとともに、6Li同位体分離条件の最適化を行う。
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