研究課題/領域番号 |
16H04625
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 信 東北大学, 工学研究科, 教授 (00243098)
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研究分担者 |
五福 明夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20170475)
藤田 欣也 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30209051)
杉浦 元亮 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60396546)
三浦 直樹 東北工業大学, 工学部, 准教授 (70400463)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人間状態推定 / 認知状態 / 可観測情報 / 機械学習 / ワークロード |
研究実績の概要 |
H29年度の研究では個人としての認知的制御モード変化(b-1)とチームとしての認知的制御モードの変化(b-2)に分け、それぞれに対して認知的制御モードの変化を推定する手法の確立を目指した b-1:簡易型ウェアラブルデバイスを用いた制御モード変化の推定手法の確立 メガネ型デバイスであるJINS-MEMEを用いることで運転員に負荷をかけることなく認知的状態を推定する手法を確立すること目指して研究を行った。JINS-MEMEは眼電位と加速度を測定することが可能であり、そこから得られる複数の情報に基づき制御モードの推定を行った。研究の第一段階としては低負荷のウェアラブルデバイスである JINS MEMEを利用し、複数日にわたって実験を行うことでライフログデバイスと機械学習手法を組み合わせることのワークロード推定への応用可能性を検討し、リアルタイム推定の結果の妥当性を確認した。研究の次の段階として、スマートグリッドシミュレータ環境を利用し、制御モードの推定可能性について認知実験を行い、JINS MEMEによる生理指標の取得と機械学習手法による作業者のワークロードの識別可能性について実験的に検証した。デバイスから得られるデータは10のパラメータとして加工し、機械学習手法には、Support Vector Machine(SVM)を使用した。その結果、スマートグリッドシミュレータを用いた動的複雑タスク環境下において、被験者の制御モード状態を90%を超える精度で識別することができた。 b-2:可観測情報からのチームのタスクパフォーマンスの推定 本研究項目では可観測情報に基づきチームとしてのタスクのパフォーマンスの評価を行う手法の確立を目指し研究を行った。可観測情報としてJINS-MEMEから獲得できる情報を元にして複数の人間で協調して行うタスクを用い、パフォーマンスと観測情報の対応付けを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御モードの推定に関しては予定通り研究は進展している。但し、適用対象に関してはスマートグリッドシミュレータ限定されており、当初予定していた原子力プラントに関係するシミュレータでの検証には至っていない。原子力プラントシミュレーションとしてはPC上でのBWRのシミュレータであるPCTRANを利用することが予定していたが、プラントの動特性を理解して実験に参加できる被験者を確保することが困難であったこと、シミュレータにおいて再現できる事象が限られており、時間的制約を制御することでの認知的制御モードの変化を誘発させるような状況を再現することが困難であったことがその理由である。原子力プラントを直接的な対象にして認知的制御モードを変化させその変化を推定する方向ではなく、もう一つの現実的状況のシミュレーション環境である建屋換気システムを対象にして、可観測情報からのチームの状態の推定を行うということに方針を変更する予定である。 提示情報によるリスク認知の制御に基づく制御モード変化の抑制に関しては、スマートグリッドシミュレータにおける想定外事象に対する対処に関して、手順を厳密に指定し操作を行う場合と、指定しない場合での操作者のパフォーマンス評価を実施しており、本研究の最終的な目標である、提示情報による行動変容という観点での研究は予定通り進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下の二つの研究項目に関して研究を進め、最終的な目標達成を目指す予定である。 1.提示情報によるリスク認知の制御に基づく制御モード変化の抑制 認知的な制御モードを決定するのは人間側の主観的リスク認知であり、このレベルは絶対的なものではなく人間がどのように状況を捉えるかという点に強く依存しており、どのように状況を人間に提示するかという問題に帰結する。本研究項目では、マニュアルの提示方法や対象システムの状況(時間的切迫度、トレードオフの状況)を運転員に分かりやすく示すことで適切なリスク認知が促進され認知的制御モードの悪化を防ぐこと可能であることを示す。具体的には、動的な環境で予期しない状態変化が発生する環境で、システムの状態が危険な状態に近づく状況を設定する。このような状況で、危険な状況に至るまでの時間を明示的に表示(トレンドグラフ等)する場合と、表示されない場合での認知的制御モードの変化の状態を比較し、将来予測可能な情報が与えられた方が認知的制御モードの悪化を防げることを示す。 2.システムへの長期的適応による行動変容に関する実験的評価 自分の認知的制御モードの自己認識が、制御モードの悪化を防げるという仮説の実証を行う。開発したシステムで認知的制御モードが悪化した時点で警報を出すような環境を構築し、自己認識を促す警報を提供する場合の方が、認知モードが許容できないレベルに陥ることを防ぐことを示す。更に長期的にこのようなシステムを使った場合に、利用経験を通じて人間側がシステムに適応し行動が変容することが予想される。この行動変容に関して観察を行い、その特徴を明らかにする。
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