研究課題/領域番号 |
16H04628
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
鈴木 達也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70323839)
|
研究分担者 |
岩熊 美奈子 都城工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00342593)
阿部 達雄 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20390403)
北垣 徹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉国際共同研究センター, 研究職 (30770036)
野上 雅伸 近畿大学, 理工学部, 教授 (50415866)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | デブリ / 廃棄物処理 / バックエンド / 原子力 / 核種分離 / 核種分析 |
研究実績の概要 |
「デブリの熱化学計算等による化学的特性の評価と模擬デブリの試作」熱化学計算では、炉内デブリ、MCCI生成物の塩素化反応に関するギブズエネルギー変化を熱力学データベースMALTを用いて計算し、有意に生じる化学反応を評価した。この結果、塩素ガスより四塩化炭素ガスを用いた方が効率的に塩素化が進むこと、コンクリート中のカルシウム化合物が優先的に塩素化されること、金属ZrはZrO2に比べて容易に塩素化されること等を示した。模擬デブリの試作では、ウラン・ジルコニウム・鉄を共沈させた後に還元して焼成する手法の検討を行った。 「デブリ化学転換及び溶解に関する基礎研究」二酸化ウランペレットと試作した模擬デブリを用いて熱酸化反応による粉体化および酸化現象の比較検討を行った。 「固体抽出剤の開発と核種分離に関する基礎研究」長鎖アミド基を交換基とする複数のモノアミド樹脂を合成し、硝酸および塩酸系にて種々の金属イオンに対する吸着特性をバッチ法により検討した。その結果、交換基の化学構造の僅かな差異によってもウラン(VI)を始めとするアクチノイドイオンや一部のFPに対する吸着挙動が異なることを明らかにした。マイナーアクチノイドの分離除去についても検討を行い、ピリジン樹脂を用いて硝酸系でマイナーアクチノイドと希土類元素の分離可能性を見出した。無機イオン交換体の研究では、タングステン、モリブデン、アンチモン、スズを含む無機イオン交換体を作製し、いずれもアモルファス構造をとっていて微細な構造を有することを確認した。0.1mol/L塩酸溶液中でアンチモンを含むものについては、ストロンチウムの吸着性能を持つことを確認した。タングステンを含む無機イオン交換体はパラジウムを吸着し、スズを含むものは、鉄およびモリブデンを吸着することを確認した。貴金属の回収については、新規有機抽出剤についても分子設計をもとに開発を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、東日本大震災に伴う福島第1事故で発生した、難溶解性のデブリに関して化学転換を行い溶解し、適切な核種分離を実施することにより、測定法の確立や処理・処分に資するために行っているものであり、デブリの化学的性質を評価するための熱化学計算等に研究、模擬デブリの試作、試作した模擬デブリを用いた化学転換及び溶解に関する基礎研究、デブリ中に含まれるウラン等のアクチノイドの分離・回収や様々な元素・核種の分離に係わる研究を実施している。それぞれの研究で当初の予定通りに研究が進捗しており、多くの成果が得られいる。また、分離に用いる吸着体については、試験の結果を反映し、適宜、物質を修正もしくは新たな手法を取り組むなどにより新たな抽出剤を得るなどしており、予想外の新たな知見も得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
デブリの熱化学計算等による化学的特性の評価に関しては、2元系合金の凝固解析プログラムを多元系の酸化物凝固解析プログラムに改良し、溶融燃料とコンクリートの溶融凝固による組織形成挙動を含めた化学特性評価を行う予定である。模擬デブリの試作に関しては、化学転換試験で用いるため複数の異なる模擬デブリを作成する。 化学転換では、模擬デブリを用いることにより、化学転換の課題が明確になったので、熱化学反応を用いて酸化現象と還元現象による粉体化と塩素化反応の確認を行う。また、プラズマ化学反応による反応促進については、装置の改良を進め、特に酸化還元による粉体化を中心に実施する予定である。。 アクチノイドの分離・回収に関しては、更に新規の長鎖型モノアミド樹脂合成に取り組むと共に、ウランおよび他のアクチノイドに対する吸着データを取得する。また、カラム試験による核種の相互分離についても検討する。更には3価のアクチノイドについても希土類元素との分離とアクチノイド間の相互分離法についても検討を行う予定であり、吸着特性を評価するために必要な分析に関しても質量分析を用いた方法を発展させる予定である。 吸着特性を評価するために必要な分析に関しても質量分析を用いた方法を発展させる。 タングステン酸系、ニオブ酸系の無機イオン交換体の作製を行い、使用済み燃料に含まれている元素(白金族、希土類、ルビジウム、バリウム、ジルコニウム、モリブデン等)の混合溶液の吸着試験を予定している。回収されるアンチモンの利用も考慮し、アンチモン酸系の無機イオン交換体についても再検討する。 また、白金族系(パラジウム、ロジウム、ルテニウム)の分離に関しては窒素系の抽出剤を新規合成する。
|