研究課題/領域番号 |
16H04631
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
後藤 康仁 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00225666)
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研究分担者 |
長尾 昌善 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (80357607)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子源 / 絶縁膜 / 二酸化シリコン / 窒化シリコン / ガンマ線 / X線 / 電子放出 |
研究実績の概要 |
耐放射線・耐熱評価用の絶縁膜としてテトラエトキシシランを用いた化学気相成長法によりSiO2薄膜を、反応性スパッタ法によりSiN薄膜を形成した。これらの絶縁膜および熱酸化SiO2膜に60Co線源を用いて64 kGyのガンマ線照射を実施した。また、イオン加速器により1.6 MeV陽子線照射を行った。現在、薄膜の電流電圧特性の評価を進めている。また、バンデグラーフ型電子線加速に接続した真空装置内でX線照射装置内に電子源構造の酸化膜を設置し、X線照射下における絶縁特性の評価を行った。SiO2膜とSiN膜の2層構造を持つVolcano構造のエミッタ作製プロセスの検討をおこなった。SiO2膜250nmとSiN膜30nmとし、既に開発したエッチバック法によりSiO2のみの場合と比べてエミッタの開口形状が変化するかを調べた。その結果エッチバック法によりエミッタが開口でき、電子放出可能なデバイスが作製できることが確認できた。また、集束電極とゲート電極の間の絶縁層も2層構造としたダブルゲート型Volcano構造エミッタの作製方法も開発した。平成28年度に作製したガラス管式真空封止管の真空排気・維持特性を確認した。真空封止管の内部は10-7 Pa以下の圧力を実現することができ、封止後3か月経過後も10-6 Pa以下の圧力を維持していることを確認した。また、この真空容器に電子源を搭載し、単独で電子源を動作させることができることを確認するとともに、実際に60Coガンマ線照射装置においてガンマ線を照射しながら電子源を動作させることができることを確認した。応用物理学会、日本真空学会、およびこれらの学会が開催する研究会等に参加し、酸化膜形成に関連する情報収集および成果発表を行った。また、昨年度得られた結果についてドイツにて開催された国際真空ナノエレクトロニクス会議にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は、耐熱動作や耐放射線動作の可能な電子源を作製、評価し、300℃、10 MGyの耐熱・耐放射線性能を示すことにある。年度当初の計画として、1. 2層絶縁膜の形成、2. 絶縁膜の絶縁特性の温度および放射線照射評価、3. 耐高温・耐放射線絶縁膜を用いた微小電子源作製プロセスの検討、4. 高温・放射線照射下における微小電子源の動作特性評価の準備、5. 情報収集と成果発表を挙げていた。現時点でSiO2のほかSiNの成膜を行い、その2層構造を問題なく形成し、これらの絶縁層を含む電子源を試作することができた。また、X線照射下やガンマ線照射下における電子源の動作特性評価を行い、予備的な評価を実施することができている。成果は国内および国際会議等で発表した。これにより最終年度において、作製した電子源の耐熱性や耐放射線性能を調べる準備がほぼ整ったことから、進捗は順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、作製した電子源の高温における動作、X線やガンマ線照射下における動作の評価を行い、300℃、10 MGyの耐熱・耐放射線性能を持つことを示す。 課題としては、高温における特性評価が平成29年度までにあまり実施できていないことが挙げられるが、高温動作はこれまでに実施した経験があり、平成30年度に問題なく実施できると考えている。10 MGyの耐放射線性能を示すためには、ガンマ線照射のみでは累積線量が不足することが考えられるので、電子線照射などによる試験を併用して行うことを考えている。
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