研究課題/領域番号 |
16H04636
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
硲 隆太 大阪産業大学, 人間環境学部, 准教授 (00379299)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実験核物理 / 素粒子実験 / 化学工学 / 同位体分離 / マイクロ・ナノデバイス |
研究実績の概要 |
(1)40Ca2+(水相)+48CaL2+(有機相)⇔48Ca2+(水相)+40CaL2+(有機相): (Lはクラウンエーテル) ①従来の2段目以降の純水への逆抽出法では、Ca濃度が30%飽和水溶液からスタートしても、3段目以降では、6桁落ちの濃度となり、トンオーダーの大量濃縮を必要とする観点からは、現実的ではなかった。今回、新たに、2段目以降も、1段目と同様にクラウンエーテル有機相のみならずCa水相も繰り返すことにより、6段目でもCa濃度が2~3割減のfeedとほぼ同じCa濃度を維持しながらの多段化の方法を確立した。この際、昨年度の重要な知見:”反応後のCa吸着クラウンエーテル有機溶媒を水のみでCaを剥がし、回収有機相でも新規の有機相と同様の結果を得、再利用可能である”を元に、高価なクラウンエーテルを繰り返し使用し、樹脂法でのCa脱離に強酸が必要な場合と比較し、水のみの取扱い易な利点にも立脚した安価な濃縮法を確立した。 ②①の液液抽出の新手法を6段目まで30分の反応時間・室温20℃で実施し、東工大のTIMS(MAT261)により同位体比を測定し、6段目での約0.6%の48Ca濃縮を確認し、1.0010±0.0003の分離係数の結果を得た。これまでの水への逆抽出法による7%濃縮・分離係数1.012±0.004(反応時間60分)に比べ約1/10であるため、今後、反応時間、温度、水相・有機相比率等の最適化を図る。この分離係数でも2300段で10倍濃縮可能であり、現実的なCa濃度で大量濃縮可能となり、現実的な見通しが立ったといえる。 ③脈流の生じない安定した送液可能で、かつ約1秒での高レスポンス流速可変な空圧制御ポンプを導入し、(a)マイクロセグメント循環流・液滴(b)バッチとの融合カオティックミキサー(c)平行向流による多段化のうち(a)で12cm流路長のテストを行い、数秒でのCa濃度変化を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費により、実験補助者を2名雇用(元京都大学原子炉実験所技官の方及び、本学3回生のアルバイト学生)し、実験のマンパワーのみならず、R&D含め共に検討可能な元技官の方のお陰で、おおむね順調に進展中。併せて、連携研究者の北大・渡慶次教授を通じてマイクロ化学技研(株)及び、阪大・藤井教授を通じて京大炉のTIMS(TRITON)、東工大・佐久間先生を通じて東工大TIMS(MAT261)との共同研究連携も図られている。
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今後の研究の推進方策 |
①バッチ法では、ほぼ飽和水溶液オーダーでのCa濃度、2300段での10倍濃縮達成の現実的な見込みが得られ、反応時間、温度、有機相・水相比率等のさらなる最適化により、分離係数の改善を図り、より少ない段数での可能性を探る。 ②2液送液ポンプは、当初、プランジャーポンプ使用を想定していたが、そもそも最低100μL/分以上の流量が必要で、性能試験結果も3mL/分で±1%以内の精度結果のため使用不可で、急遽、北大よりHPLC用のシリンジポンプを借用しテストを行ったが、リザーバー容量が数mLに限られ、制御が困難で取扱い難のため、最終的にマイクロフルイディクス用の高性能な空圧制御ポンプを導入した。送液制御に従来の機械駆動を持たず脈動が原理的に発生せず、流速切替も約1秒で設定流速が反映される高レスポンス性能を備えている。現在、市販の2気圧タイプを導入しているが、流路長12cmほどが送液の限界で、特注の4.3m流路長には圧力が足りず、マイクロ化学技研と共同で7気圧タイプへの改良を検討し、(a)セグメント循環流・液滴(b)カオティックミキサー(c)平行向流の3通りのリアクターで、下駄箱サイズでの大量濃縮プラント実現に向け、反応時間の短縮及び高分離係数の達成を目指す。
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