研究課題/領域番号 |
16H04641
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長野 克則 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80208032)
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研究分担者 |
小原 伸哉 北見工業大学, 工学部, 教授 (10342437)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スマートコミュニティ / 地中熱ヒートポンプ / スマートHEMS / 蓄熱 / 給湯 |
研究実績の概要 |
北海道大学チームでは,気象予測と線形計画法を用いた最適化計算を取り入れた高速最適運用システムを開発し,この最適運用システムを実際の実証実験設備へ組み込み,自律運転の実証を行った.まず,気象予測から住宅内機器運転方法を最適化し,機器を自律運転制御するシステムを計算時間が少ない線形計画法で開発した.日射量・給湯負荷・電力需要などのデータを入力することで,蓄電池の充放電,給湯HP発停などの自律運転スケジュールを自動策定する.例えば,電力料金最小化を目的関数に蓄電池・給湯HPの最適化した場合,夏期代表日においては自家消費率が32 %向上し,電力料金は39 %削減できる結果となった.自律運転の実証試験を行った.1時間毎に充放電制御を行い,使用電力料金をできるだけ削減する自律制御運転に成功した.計算では,札幌北部・石狩地域を想定し,大規模太陽光発電所および大規模風力発電所を有したスマートコミュニティにおいて再生可能エネルギー利用率を最大化し,CO2排出量を最小化するような時刻別電力料金設定による需要制御方法を検討した.その結果,双方向パワーコンディショナーおよび給湯ヒートポンプを最適に制御すれば,太陽光発電システムの利用率を60.7 %から88.5 %に上昇させ,CO2排出量を34.9 %,年間コストを29.5%削減できる可能性があることを示唆した.北見工業大学では,日射量情報に基づきシステムの運用を最適化するプログラムを遺伝的アルゴリズムで作成し,スマートハウス用の試作蓄放電システムに導入した.当該システムではプログラマブル電源及びプログラマブル電子負荷を設置することで,太陽光発電の出力パターンとスマートハウスの負荷パターンを任意に設定できるようにした.また,リチウムイオンポリマー電池の充放電制御器を開発し,スマートハウスに大容量電池を設置した際の安全対策の方法について考察した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道大学チームでは,線形計画法による高速最適運用システムを開発し,これを実際の実証試験設備に組み込み,自律運転を成功させた.ただし,最適充放電制御の時間間隔は1時間ごとで太陽光発電などの創エネルギーや電力消費の負荷変動を考えると,おおよそ10分間隔が適当ではないか考えている.ただし,実際にどの位小さくすればどのくらいの効果が得られるかといったソフト側の検討を行うと同時に,ハードの特性を加味した適当な制御間隔を決めているところである.具体的には,計算機上での検討に加え,太陽光発電システムからの発電量を模擬できるソーラーシミュレーター(H29年度購入)と交流電子負荷装置(平成30年度購入予定)を用いた実験から検討を行っているところである.北見工業大学側では,日射量情報に基づきシステムの運用を最適化するプログラムを遺伝的アルゴリズムで作成し,スマートハウス用の試作蓄放電システムに導入し,実験システムの種々の安全装置の動作を確認した後,実証実験を始めたところである.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,研究段階のPhase4であり,仮想都市でのスマートコミュニティをシミュレーションして導入効果を評価すると共に,それを視覚的にわかり易くするためにマッピングを行う.北大チームは,地中熱を核としたスマートコミュニティの導入効果について,建物単体から街区,地域へとその導入規模の拡大させた場合の計算,評価を行う.具体的には,昨年度得た実証試験データを標準サンプルデータとし,個々の熱・電気負荷条件や蓄熱層の熱特性などを自己相関モデルから空間分布として多数生成するとともに,気温など再生可能エネルギー供給に係る外界条件をいくつかのシナリオを設定した仮想都市を計算機上に創出させてシミュレーションを行う.次に,クラウド型双方向HEMSを各世帯に導入した場合の再生可能エネルギーの利用効率や総エネルギー削減量,CO2削減量などを計算し,導入効果の定量評価を行う.北見工業大学では戸建て住宅に本システムを導入した際の効果を明らかにするとともに,数棟から数百棟程度のスマートハウスに本システムを導入して連系させる場合の,3E+S(経済性,環境負荷,セキュリティ,安全)の効果を明らかにする.そのため,分散された太陽電池アレイの出力を連系した際の平滑電力をプログラマブル電源で模擬し,複数のスマートハウスの電力負荷をプログラマブル電子負荷で与える.最終的には,スマートコミュニティ導入シミュレーションを地域,県,国と規模拡大して行い,規模拡大の効果を評価する.最後に,得られる導入効果(CO2削減量,再生可能エネルギー消費予測など)を視覚的に効果的なマッピングを行い,広く社会にインパクトを与え,地中熱を核とするスマートコミュニティ導入の原動力となる成果を発信する.
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