研究課題/領域番号 |
16H04643
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
秋澤 淳 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10272634)
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研究分担者 |
大野 弘幸 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 学長 (00176968)
中山 政行 東京農工大学, 大学院生物システム応用科学府, 特任助教 (30772868)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン液体 / 吸収冷凍サイクル / 逆浸透膜 / 低温熱源 |
研究実績の概要 |
本研究は60℃程度で水と分離する性質を持つイオン液体を用いて,低温熱源を利用して冷熱を発生する吸収冷凍サイクルを実現することを目標としている.提案するサイクルの動作は次の通りである.蒸発器で蒸発した水は吸収器において塩化カルシウム水溶液に吸収される.ポンプで加圧されることにより吸収溶液中の水が逆浸透膜を通過し,吸収溶液は濃縮され,吸収器に戻る.通過した水は分離性イオン液体水溶液に取り込まれる.イオン液体水溶液を60℃程度の熱源で加熱し,水とイオン液体を分離させる.濃縮されたイオン液体は逆浸透膜に還流する.分離した水は蒸発器に移動し,再びサイクルを循環する.吸収溶液を直接加圧して水分を逆浸透させるには非常に高い圧力を必要とする.それに対し,本提案では吸収溶液とイオン液体水溶液との間の浸透圧差の分だけ加圧するので,圧力は直接加圧よりも小さくてすむ点に優位性がある. H28年度に分離性を持つイオン液体として[P4444][CF3COO]を選定した.このイオン液体は55℃に加熱すると水と分離する特性を持つ.したがって,60℃の低温排熱を利用することが可能である.H29年度には外部に当該イオン液体の製造を外注し,その試作品について所定の温度で分離するかどうかを確認した.また,イオン液体水溶液が加熱分離する際,イオン液体には水が含まれる一方,分離した水にはイオン液体が混入する.完全にイオン液体と水に分かれないことが知られている.そこで,溶液中の水分量を測定する装置を購入し,実際に分離後のイオン液体側と水側の水含有率を測定した. 逆浸透プロセスには海水淡水化用の浸透膜を使用する.既存の膜について予備的な加圧試験を行ったところ,50気圧程度で膜が破断する結果を得た.サイクルシミュレーションを行うにあたり,逆浸透膜による水分離の計算方法を整理した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案サイクルを実際に検証するために必要な分離性イオン液体を外注したが,製造プロセスのトラブルがあり,製造に時間を要した.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度には購入したイオン液体と塩化カルシウム水溶液を用いて,逆浸透プロセスの実験を行う.塩化カルシウム水溶液を窒素ガスで加圧することにより逆浸透膜を介してイオン液体側に水が移行する量を測定する.両側の水溶液の水含有率を測定することで水の移行量を算出する.この結果から逆浸透膜の物質移動係数を推定し,サイクルシミュレーションの計算手法に取り入れる. 逆浸透膜が必要な圧力よりも小さい圧力で破断することが判明したため,完全なサイクルを形成することは難しい状況にある.したがって,50気圧で成立するサイクルの条件を明らかにし,可能な範囲でサイクルの各状態を実測することを目指すこととした.予めサイクルシミュレーションによって可能なサイクルの状態およびCOPを推定する.
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