研究課題/領域番号 |
16H04646
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
飯田 和昌 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90749384)
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研究分担者 |
生田 博志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30231129)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鉄系超伝導体 / エピタキシャル薄膜 / 臨界電流特性 / 超伝導線材 |
研究実績の概要 |
NdFeAs(O,F)薄膜を[001]-tilt MgO(100)バイクリスタル基板上へ成膜し,粒界特性を調べた。その結果,臨界電流の面内配向度依存性は,銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7のそれと類似した傾向が得られた。従って,NdFeAs(O,F)の臨界電流特性を劣化させないためには,銅酸化物高温超伝導体と同様に,結晶を2軸配向させ,かつ結晶モザイシティを3°以下に制御する必要があると考えられる。しかし,薄膜の構成元素であるフッ素が粒界を腐食している可能性もあり,NdFeAs(O,F)固有の粒界特性を調べられていないことも懸念された。そこで次年度は,Fが含まれていない系,具体的にはFeサイトをCoで部分置換したNd(Fe1-xCox)AsOを研究対象物質とし,その粒界特性を調べることを計画している。 次に,金属基板上へ成膜したPドープBaFe2As2 (コーテッドコンダクター)の強磁場下での詳細な輸送特性を調べた。その結果,粒界も磁束ピニングセンターとして働くことが分かった。また,PドープBaFe2As2コーテッドコンダクターは,4.2 K,15 Tの磁場を試料のc軸,ab面内に平行に印加しても臨界電流密度を0.1 MA/cm2以上保っており,MgB2やNbTiよりも優れた臨界電流特性を有していることが分かった。 また20 Tの磁場を印加した時の臨界電流特性はNb3Snとほぼ同等であることを示した。また本研究対象物質ではないが,NiドープBaFe2As2の強磁場下での輸送特性を調べた結果,この系も超伝導線材のポテンシャルを有していることを明らかにした。特に,磁束液体領域がCoドープBaFe2As2に比べて非常に狭いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NdFeAs(O,F)薄膜をバイクリスタル基板上へ成膜し,粒界特性を調べた。その結果,臨界電流の面内配向度依存性は,銅酸化物高温超伝導体YBa2Cu3O7のそれと類似した傾向が得られた。しかし,薄膜の構成元素であるフッ素が粒界を腐食している可能性があり,NdFeAs(O,F)固有の粒界特性を調べられていないことが懸念された。そこで次年度は,Fが含まれていない系,具体的にはFeサイトをCoで部分置換したNd(Fe1-xCox)AsOを研究対象物質とし,その粒界特性を調べる。 MBE装置の不具合により,PドープBaFe2As2の粒界角度を変化させた粒界特性の研究を行えなかったが,最終目標である金属基板上へ成膜したPドープBaFe2As2を共同研究先から提供を受け,強磁場下での詳細な輸送特性を調べることができた。具体的には,粒界も磁束ピニングセンターとして働くことを示した。また,PドープBaFe2As2コーテッドコンダクターは,15 Tの磁場を試料のc軸,ab面内に平行に印加しても臨界電流密度が0.1 MA/cm2以上有しており,MgB2やNbTiよりも優れた臨界電流特性を有していることが分かった。 これら一連の成果は,Scientific Reportsにて報告した。また本研究対象物質ではないが,NiドープBaFe2As2の強磁場下での輸送特性を調べた結果,この系も超伝導線材のポテンシャルを有していることを明らかにした。特に,磁束液体領域がCoドープBaFe2As2に比べて非常に狭いことを明らかにした。これら一連の成果はApplied Physics Lettersに報告した。
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今後の研究の推進方策 |
様々な面内配向度を有する[001]-tilt MgOバイクリスタル基板上にNd(Fe1-xCox)AsOを成膜し,粒界特性を調べる。この研究目的を達成する為に,まず,MgO(100)単結晶基板上にNd(Fe1-xCox)AsOを成膜する条件の最適化を行う。 また,磁束ピニングセンターの導入による磁場中臨界電流特性の向上を計画している。多層膜法,基板装飾法などを計画しているが,その他にミスカット基板を用いた磁束ピニングセンターの導入を計画している。さらにミスカット基板上に作製されたNdFeAs(O,F)の強磁場下における輸送特性評価も計画している。
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