研究成果の概要 |
鉄系超伝導体の中で超伝導転移温度が高いNdFeAs(O,F)と超伝導対破壊電流が高いBaFe2(As,P)2を研究対象物質として選定し,これらの粒内・粒界特性を調べた。その結果,NdFeAs(O,F)の[001]-tilt対称傾角粒界において臨界電流が低下する粒界角度は,他の代表的な鉄系超伝導体[Ba(Fe,Co)2As2やFe(Se,Te)]とほぼ同じ約9度であった。また,BaFe2(As,P)2テープ線材の輸送特性評価の結果,低傾角粒界が磁束ピンニングセンターとして働き,臨界電流特性が向上することが分かった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
鉄系超伝導体の粒界特性を明らかにすることは超伝導線材開発だけでなく,バルク磁石開発にも重要な知見となる。今回,鉄系超伝導体の中で最初に発見されたLnFeAs(O,F)[Ln: ランタノイド元素]の粒界特性を明らかにすることで,粒界における超伝導臨界電流の低下が始まる粒界角度(臨界角度)が,代表的な鉄系超伝導体であるBa(Fe,Co)2As2やFe(Se,Te)とほぼ同じであった。従って,鉄系超伝導体の超伝導ギャップ対称性は,全ての系で同じである可能性がある。工学的には,銅酸化物超伝導体に比べて,臨界角度が約2倍大きく,面内配向度の制限が緩くなるので線材作製時におけるコスト低減につながる。
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