研究課題/領域番号 |
16H04647
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
堤 宏守 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (90211383)
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研究分担者 |
上野 和英 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (30637377)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 硫黄 / アルケニル化合物 / 二次電池 / 正極材料 / リチウム-硫黄電池 |
研究実績の概要 |
種々の官能基(水酸基やカルボキシル基など)を有するアルケニル化合物と硫黄との共重合体を硫黄とアルケニル化合物を所定の比率で混合、加熱することにより合成した。得られた共重合体の構造は、IR、NMR等の各種分光測定により確認すると共に、MALDI-TOFMAS測定やGPC測定により、詳細な構造や分子量に関する知見を得ることができた。これらの共重合体の基本的な構造は、用いるアルケニル化合物には大きく依存せず、環状構造(八員環)を有する硫黄が開環、アルケニル化合物の持つ二重結合と反応する形の共重合反応が起こり、ポリスルフィド結合を主鎖に有する構造であることが明らかとなった。これらの共重合体に導電助剤となる炭素材料(アセチレンブラックなど)と結着剤を混練し、電極を作製した。この電極を用いて有機電解液中におけるこれらの共重合体の電気化学特性評価を実施した。その結果、共重合体中に含まれるポリスルフィド結合の還元、再酸化反応に対応する電気化学応答が観察された。この応答は、硫黄が有機電解液中において示す酸化還元応答と類似していた。また、これらの電極を正極に用い、リチウム箔を負極とするコイン型セルを構築し、定電流充放電測定を行ったところ、これらの共重合体は、二次電池用正極材料として機能することが明らかとなった。また、電気化学挙動や充放電に伴う容量変化は、用いるアルケニル化合物の構造や溶解性に影響されることも明らかとなった。アルケニル化合物の有する官能基を架橋するような後処理を実施すると、電極の容量維持率が改善されることも明らかとなった。 今後は、反応に用いるアルケニル化合物の種類を増やすと共に、導入する官能基による影響について検討を行う。また、リチウム電解液中で機能した共重合体のマグネシウム電解液中における挙動についても詳細に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた共重合体の合成、同定、電気化学測定等は、順調に進捗しており、一定の成果も得られている。今後は、この共重合体の別経路による合成の可能性について、検討を行う。さらに、マグネシウム電解液系におけるこれらの共重合体の電気化学的挙動についても検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今のところ、おおむね良好に研究は進捗しているので、計画通りに今後も研究を進める。現在課題と感じているのは、マグネシウム電解液におけるマグネシウム負極の挙動が安定しなかったり、溶解、再析出がスムーズに行われなかったりする場合が想定されることである。これは、マグネシウム電極表面の酸化皮膜の強固さに由来するものとされており、本研究において合成した共重合体の電気化学的な性能以外の要素に研究結果が左右される可能性を有している。このため、リチウム電解液系における電気化学的挙動の解析を中心に行うことも視野に入れながら研究を推進する。
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