研究課題
本研究の目的は、マーモセットでの遺伝子改変を容易でかつ動物福祉的にも問題のない形でおこなう手法を開発することであり、そのために胚盤胞補完法を用いて異種動物の精子をマウスで作出する方法を確立する。また、マーモセット受精卵を安価かつ動物福祉にかなった形で取得するために、卵巣組織をヌードマウスへ移植して、成熟卵子を取得する方法の確立を目指す。本年度の研究により、FTB-Tg(Ddx4-Cre)1Dcas/Jと129-Gt(ROSA)26Sortm1(DTA)Mrc/Jを交配して得た精巣形成不全マウス受容胚に、ラットES細胞を移入することで、胚盤胞補完法によりラット精子を取得する手技を確立した。キメラマウス精巣にはラット精子が産生されており、顕微授精によりラット受精卵が取得できた。さらに、マーモセットES/iPS細胞の導入をする細胞性免疫不全の遺伝子背景を持つ受容胚作出マウスコロニーの整備も進んでいるので、この確立した手法を用いてマーモセット精子作出の研究進展を図る。次にマーモセット成熟受精卵をマウスから取得する研究は、日本クレア及び京都大学霊長類研究所より分与を受けた死亡動物から採取した卵巣組織を冷蔵下で移送し、約1-2㎜角に細切後卵巣除去したヌードマウスの皮下及び腎臓被膜下に移植した。ホルモン投与により卵子の成熟過程を検討した結果、腎臓被膜下の方が卵巣組織の維持及び卵胞の成熟に適していることが明らかになった。ホルモン投与により認められた移植組織卵胞から採取した卵子は極体を放出しており、顕微授精により受精卵の作出が可能な状態であった。現在、ホルモン投与の期間や量などの条件検討を進めている状態である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の肝である、胚盤胞補完法を用いた異種動物の精子を作出する手法に関しては、精巣形成不全マウス胚にラットES細胞を導入することでラット精子を生産するキメラマウスの作出に成功しており、基本的なプロトコールは完成した。また、2種類のマウスFTB-Tg(Ddx4-Cre)1Dcas/Jと129-Gt(ROSA)26Sortm1(DTA)Mrc/Jの遺伝子背景をヌードマウスのものにする繁殖コロニーの整備も進んでいる。さらに、死亡個体からの卵巣組織取得に関しては、日本クレア八百津飼育場以外に、京大霊長類研、実験動物中央研究所などからも組織分与の協力が得られ、マウスでの成熟卵子の連続的な作出が可能になってきた。
本研究を進める上での最大の難関はナイーブ化したマーモセットES/iPS細胞の樹立である。現在既存の細胞の培養条件を種々検討しているが、いずれにしてもナイーブ化の最終評価は生殖細胞への分化であるので、これまで整備してきた精巣形成不全マウス受容胚に当該細胞を移植して、マウスによるマーモセット生殖細胞の作出を検討する。また、マーモセット受精卵から新規にES細胞を樹立して、そのナイーブ化を検証する。さらに、大規模にヌードマウスからマーモセット成熟卵子の作出が可能になるシステムを整備する。
新潟大学脳研究所http://www.bri.niigata-u.ac.jp/index.html
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 4件、 査読あり 22件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 10件) 備考 (1件)
Hear Res.
巻: 344 ページ: 284-294
10.1016/j.heares.2016.12.006.
Neuropharmacology.
巻: 117 ページ: 1-13
10.1016/j.neuropharm.2017.01.011.
Genes Cells.
巻: 22 ページ: 220-236
10.1111/gtc.12470.
Glia.
巻: 65 ページ: 917-930
10.1002/glia.23134
J Neurosci.
巻: 36 ページ: 4296-312
10.1523/JNEUROSCI.4178-15.2016
巻: 36 ページ: 4846-58.
10.1523/JNEUROSCI.0161-16.2016.
Neuron.
巻: 90 ページ: 752-67
10.1016/j.neuron.2016.04.001.
J Cell Sci.
巻: 129 ページ: 2757-66
10.1242/jcs.185983.
Nat Commun.
巻: 7 ページ: 12135
10.1038/ncomms12135
Cell Rep.
巻: 16 ページ: 994-1004
10.1016/j.celrep.2016.06.053.
巻: 16 ページ: 1405-15
10.1016/j.celrep.2016.06.083.
Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci.
巻: 92 ページ: 237-54
10.2183/pjab.92.237.
巻: 16 ページ: 2901-13.
10.1016/j.celrep.2016.08.020.
Brain Struct Funct.
巻: 222 ページ: 1-28
10.1007/s00429-016-1303-0
巻: 7 ページ: 12938
10.1038/ncomms12938.
巻: 7 ページ: 12926
10.1038/ncomms12926.
Neurobiol Dis.
巻: 96 ページ: 271-283
10.1016/j.nbd.2016.09.016.
eNeuro.
巻: 3 ページ: e0110-16.2016
10.1523/ENEURO.0110-16.2016
巻: 65 ページ: 360-374
10.1002/glia.23096
Nature.
巻: 539 ページ: 378-383
10.1038/nature20142
巻: 36 ページ: 11801-11816
10.1523/JNEUROSCI.0322-16.2016
Front Behav Neurosci.
巻: 10 ページ: 214.
10.3389/fnbeh.2016.00214
http://www.bri.niigata-u.ac.jp/result/cellular/000675.html