研究課題
1. 上丘ニューロンによる生物学的サリエンス注意機構:H29年度は、上丘に顔の鋳型が存在するか神経生理学的に明らかにするため、顔輪郭内の目、鼻、口などの位置変更、顔輪郭の有無、および画像の明暗反転などを操作した種々の顔の線画(40種類)に対する、サル上丘上視野ニューロンの応答を記録・解析した。その結果、1)前年度の中心視野ニューロンと同様に上下反転ならびに白黒反転に関係なく、顔画像に応答性が高いが、2)顔刺激に対する選択的応答性は中心視野ニューロンより低いことが明らかになった。2. 上丘ニューロンによる時間的サリエンス注意機:H29年度は、報酬量を一定(0.5 ml)にし、課題は遂行できるが見本刺激およびターゲットの出現時間を推測できないように課題パラメータを変化させて(報酬呈示の時間的予測を困難な状況にして)解析した。すなわち、見本刺激数を3-5および遅延期間を1-3秒にランダムに設定し、遅延期漸増応答に及ぼす影響(課題3)を解析した結果、遅延期漸増応答がほぼ消失することが判明した。3. 前内側前頭葉ニューロンによる生物学的サリエンス注意機構:本研究では、標準画像(ヘビ画像4種類、サルの顔画像4種類、サルの手画像4種類、および単純幾何学図形4種類)だけでなく、ヒトの顔画像4種類、肉食動物(豹、虎など)4種類、非肉食動物4種類(げっ歯類、家兎、鶏)、および猛禽類(ワシなど)4種類を視覚刺激(合計8カテゴリー32種類)として用い、サルに遅延非見本合わせ課題を遂行させた。H29年度は、以上の視覚刺激に対する内側前頭前野の腹側部(前部帯状回膝前部を含む)のニューロンの視覚応答を解析し、特に前部帯状回膝前部においてヘビ応答性が高いことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に研究棟の耐震改修後の実験室再整備が終了したため、今年度は実験室をほぼ通常通り使用できるようになった。このため今年度の目標であるサル上丘及び内側前頭前野ニューロン活動の記録を予定通り行なうことができた。研究成果については、特に内側前頭前野の研究において、同領域の特に前部帯状回皮質膝前部ではヘビ画像およびサル顔画像に対する応答性が高いことが判明した。これら内側前頭前野の結果については、昨年度の研究結果と合わせて論文投稿し、受理されている。また、本研究に関連してこれまで行ってきた研究結果についてもデータの再解析を行い、論文投稿した状況である。
これまで特に問題は認められておらず、今後は、上丘ニューロンの生物学的および時間的サリエンスについて重点的に記録・解析していく予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Cerebral Cortex
巻: in press ページ: 1-15
10.1093/cercor/bhx118