研究課題
記憶は、学習時の感覚入力に応答し活性化した記憶痕跡細胞にコードされる。本課題では、我々が構築した個々の神経細胞の活動様式を反映するCa2+動態と、標識された記憶痕跡細胞を同一個体内で共に観察できる新規技術を用いて、記憶痕跡細胞に特有の学習時や学習前・後の活動パターンの抽出を行うことで、記憶痕跡細胞の出現・選択の原理を明らかにすることを目的とした。これまでに新規空間・文脈学習とその後の睡眠時(NREM/REM)、そして次の日の同じ空間暴露による記憶想起と異なる空間への暴露という複数のセッションでCa2+イメージングを行った6例のマウスのデータが集まっており、理研BSI深井朋樹リーダーとC. C. Alan Fung研究員とともに数理解析を進めてきた。この結果、学習時に出現した同期活動で規定された複数の記憶痕跡細胞の中のサブ・アンサンブル群が、学習後や想起時にかけて再び同じ細胞の構成による同期活動によって情報を再現していることが明らかとなった。この記憶痕跡細胞サブ・アンサンブルの再活動性は、異なる空間に暴露されると有意に低下することから、対応する記憶に対し特異性があることが確認された。今年度は、この継続的なサブ・アンサンブル活動が、コントロール細胞と比べ記憶痕跡細胞で有意に高い確立で出現すること、そして、記憶痕跡細胞群のオリジナルデータとシャッフルデータから抽出されたサブ・アンサンブル群を比較すると、オリジナルデータに由来するサブ・アンサンブルの方が有意に高い確立で継続的な活動を示すことが明らかになった。以上の結果は、生理的な意義を持った、記憶痕跡細胞特有の情報表現による記憶獲得・定着の機構を可視化したものである。この内容で投稿した論文は、現在accepted in principleとなっており、体裁を整えた最終版の投稿を完了したところである。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Molecular Brain
巻: 12 ページ: 2
10.1186/s13041-018-0424-1
The Journal of Neuroscience
巻: 38 ページ: 6854~6863
10.1523/JNEUROSCI.2976-17.2018
http://www.med.u-toyama.ac.jp/bmb/index-j.html