研究課題
視床神経や大脳皮質神経細胞の分離培養実験から、draxinは低濃度では視床神経の突起伸長を促進し、高濃度では逆に突起伸長を抑制する事が分かっている。このdraxinの濃度依存的な活性が、大脳における神経回路形成に重要であると考えられる。従って、本研究では、draxinの濃度依存的な軸索ガイダンス活性制御の分子メカニズムを調べるために以下の研究を行った。draxinの軸索伸長活性にneo1受容体とdcc受容体が必要かどうかを調べるために、これらの受容体変異マウスを用いた分離培養実験を行った。その結果、低濃度(10nM)のdraxinの活性(神経突起伸長を促進する)は、DccとNeo1のダブルノックアウトマウスの神経細胞ではほぼ完全に消失した。この結果から、draxinの神経突起伸長の促進効果には、受容体であるDccとNeo1があれば十分であると考えられた。一方、高濃度(100nM)のdraxinの活性(神経突起伸長を阻害する)は、DccとNeo1のダブルノックアウトマウスの神経細胞において低減するものの完全には消失しなかった(図2)。この結果から、draxinの神経突起伸長の阻害効果には、受容体であるDccとNeo1は必要であるが、それ以外の受容体が関与する事が示唆された。draxinの活性制御におけるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)が重要であると予想されたため、HSPGのヘパラン硫酸側鎖を分解するヘパリナーゼの存在下において、正常マウスの神経細胞を分離培養し、draxinの濃度依存的な活性にHSPGが必要であるかどうかを調べた。非常に面白いことに、本来神経突起伸長を阻害する高濃度でのdraxinの活性がヘパリナーゼを添加すると逆転し神経突起伸長を促進する事を見出した。この結果から、draxinの阻害活性にHSPGが重要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
機能的に重要なdraxin受容体を同定できたから
draxinノックアウトマウスでは、脳梁や視床皮質軸索などの軸索形成に大きな異常が観察される。そこでこのdraxinの機能が種を超えて保存されているか食肉類哺乳動物であるフェレットで検討する。
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