研究課題
本研究では触覚受容に必要な分子の同定と機能解析を目的として、まず、触刺激応答に異常のあるゼブラフィッシュ変異体の単離を行った。ゼブラフィッシュをモデルとして順遺伝学を行い、触刺激に異常のあるゼブラフィッシュ変異体を得た。触刺激以外にも光刺激、音刺激、匂い刺激、味覚刺激、水流刺激といった他の体性感覚刺激を与えて、触刺激応答の異常と同様の感覚刺激応答の異常があるかも調べた。これにより、ゼブラフィッシュ変異体が触刺激に対する応答のみに異常があるのか、それとも感覚刺激を全般的に欠いているのかに分類することができた。さらにゼブラフィッシュ稚魚の皮膚を除いた状態でカフェインに暴露させて筋のリアノジン受容体を直接活性化して細胞質のカルシウム濃度を高めて筋収縮が起きるかどうかを調べた。これで筋収縮しないものはリアノジン受容体あるいはそれよりも下流に異常があることを示唆しており、具体的にはトロポニン、アクチン、ミオシンなどの異常による運動器の機能喪失で、そもそも運動能力を失っていることが類推される。これらの変異体を得ても本研究目的の達成にはつながらないので、これらを効率的に除外し、目的にかなう変異体を得ることができた。次に変異体の責任遺伝子を同定するためにWIKという遠系統の野生型ゼブラフィッシュと交配して、変異をヘテロにもちうるF1世代の個体をたくさん得た。F1同士を交配するとF2が得られるが、1ペアから産まれるF2個体の中で1/4にホモ変異体、すなわち触刺激応答に異常を示すものが得られるようなF1ペアをヘテロキャリアのペアとしてとして同定した。ヘテロキャリアのF1ペアを交配し、F2稚魚を得ると、その1/4は変異体なので、マイクロサテライトマーカーを用いたPCRによるラフマッピングでそれらの変異体を解析した。本研究で得られた変異体系統のうち1つは染色体5番に変異があることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
もともと予定していた研究を遂行する中で、特に当初予期していなかった実験結果は得られていない。おおむね予想通りに研究が進捗していると言える。
次年度も引き続き、ゼブラフィッシュ変異体の単離を行い、それらを効率的に分類して、本研究目的に沿うものを選別して解析に回す。解析が先行している変異体についてはマップングまで進んでいるので、責任遺伝子の同定や発現部位の解析を計画している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
eNeuro
巻: 4 ページ: 1
10.1523/ENEURO.0194-16.2017