研究課題
本研究では触覚受容に必要な分子を同定し、その機能を解析することを目的としている。昨年度に引き続き順遺伝学の手法を採用して、触刺激応答に異常のあるゼブラフィッシュ変異体の単離を進めた。触刺激に対する応答以外にも光刺激、音刺激、匂い刺激、水流刺激などた他の体性感覚刺激に対する応答も観察し、触刺激応答に異常があるだけでなく、他の感覚刺激応答にも異常があるかを解析した。また、ゼブラフィッシュ稚魚の皮膚を除いて筋を露出させた状態で筋のリアノジン受容体を直接活性化するカフェインに暴露させて応答を観察することで、筋のアクチンやミオシンの変異など運動器に異常があるのか、それともそれよりも上流の神経系に異常があるのかを区別した。前者は目的とする触覚受容研究の対象ではないので、この先の解析対象から除外し、後者を解析した。次に変異体の原因遺伝子を同定するために変異のキャリア個体を遺伝的多型の多い野生型系統と交配して、変異をヘテロにもつF1個体を得て、F1同士を交配してF2世代でホモ変異体を得た。F2ホモ変異体からゲノムを抽出し、あらかじめゲノム上にデザインされたマイクロサテライトマーカーを用いたPCRによるラフマッピングで変異の乗る染色体を同定した。ゲノム中に見つかるCAリピートに注目してマイクロサテライトをデザインして、さらにマッピングを進めることで、ゲノム中の500 kb程度の領域に変異を絞ることができた。その領域には遺伝子は多くても10個程度しかないので、予想される機能に注目して優先順位を決めつつ、各遺伝子のcDNAを野生型および変異体からクローニングして、シーケンサで塩基配列を決定し、変異を探索した。これにより、本研究で得られた変異体系統のうち1つは染色体5番の中でも特定の400 kbの領域にしぼられ、その領域に存在する小胞体タンパク質をコードする遺伝子に変異があることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
もともと予定していた研究を遂行する中で、特に当初予期していなかった実験結果は得られていない。おおむね予想通りに研究が進捗していると言える。
次年度も引き続き、ゼブラフィッシュ変異体の単離を行い、それらを効率的に分類して、本研究目的に沿うものを選別して解析に回す。解析が先行している変異体については責任遺伝子の同定まで進んでいるので、発現部位の解析や機能解析を計画している。
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