研究課題/領域番号 |
16H04658
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
粟崎 健 杏林大学, 医学部, 教授 (60359669)
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研究分担者 |
加藤 健太郎 杏林大学, 医学部, 講師 (30733068)
佐藤 玄 杏林大学, 医学部, 講師 (70301299)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳 / 神経幹細胞 / ショウジョウバエ / 進化 / 神経発生 / 神経回路 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、大きく2つの研究を計画した。1つ目は (a) 遺伝子発現解析であり、もう一つは (b) 神経幹細胞クローンをショウジョウバエ種間で比較するために必要なトランスジェニックを作成することである。(a)については、3種のショウジョウバエ, アナナス、カスリ、ヒョウモンにおいて、発生ステージを追って脳中枢神経系よりRNAを精製して、トランスクリプトーム解析を行うことを予定していた。生育のコンディションの最適化と各種においてサンプリングを行うタイミング、さらに必要なサンプル数のチェックを行うことに時間を要したこと、さらには、予想外の問題が生じたことにより、実際にトランスクリプトーム解析を行うにいたらず、研究に遅れが生じた。 (b)については、予定していた2種のうち、1種アナナスショウジョウバエにおいてattp siteを持ったトランスジェニックラインの作成に成功し、7ラインを確立した。さらにattp site に対して、phiC31によるインテグレーションを行うことが可能であることを確かめることができた。しかしながら、インテグレーションの効率が著しく低かったため、目的とするコンストラクの導入を見合わせた。また、カスリについては、attp siteの導入を試みたが非常に導入効率が悪く、成功しなかった。そこで、計画を見直し、トランスフォーメーションが比較的容易であると考えられる、オナジショウジョウバエを使ったトランスジェニックの作成を合わせて行なった。さらに、神経幹細胞クローンを可視化するための簡便な方法として、1) hs-FLP, 2) nSyb-GAL4, 3) UAS-FOT-GFPを持つトレンスジェニック系統の作成を、オナジショウジョウバエとアナナスショウジョウバエで試み、それぞれ確立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トランスクリプトーム解析について、予想外の問題は分担研究者の1名の体調の不良である。担当していた分担研究者の体調不良が進行し、最終的に長期間の入院となってしまったため、解析を最後まで行うに至らなかった。次年度は研究体制を見直して、再度本実験課題について執り行うことを計画している。 トランスジェニック系統の作成については、2つの問題により、予定通りに計画が進まなかった。1つ目は、アナナスショウジョウバエにおいて確立した、attp系統へのインテグレーションの効率が予想外に低かったことである。これにより、当初予定していた、コンストラクの導入を中断することとなった。2つ目は、カスリショウジョウバエにおいて、トランスジェニック系統が確立出来なかったことである。当初予定した方法ではうまくいかないため、方法を見直す必要がある。 しかしながら一方で、トランスジェニック系統については、当初予定していなかった、オナジショウジョウバエを用いた系統の作成が順調に行われた。さらには、当初とは異なる、簡便的なクローンラベル法のための系統が確立できた。このことを考慮にいれると、トランスジェニックの作成についての進捗は予定からほとんど遅れていないと判断した。 以上、総合的に考えると、やや遅れているというのが、自己評価の結果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画は、実験の結果、進めることが難しいと考えられる問題、さらには想定外の問題が生じたため、予定していた研究計画の全てを行うことが出来なかった。そこで、当初の計画を見直し、(a) 3種のショウジョウバエ, アナナス、カスリ、ヒョウモンにおいて、発生ステージを追って脳中枢神経系よりRNAを精製して、トランスクリプトーム解析を行う。(b)平成28年度においてオナジショウジョウバエとアナナスショウジョウバエで確立した1) hs-FLP, 2) nSyb-GAL4, 3) UAS-FOT-GFPのトランスジェニック系統を用いて、神経幹細胞クローンのラベルが現実的に上手く行くかを検討し、これらの種がクローナルユニットの比較研究に有用であるかどうかを、評価する。(c)アナナス、カスリ、ヒョウモンショウジョウバエ、において、効率良くトランスジェニックショウジョウバエの作成法の再検討を行う。(d)予定していた、アナナス、カスリ、ヒョウモンショウジョウバエ以外で、キイロショウジョウバエからなるべく分岐の遠いショウジョウバエ種において、トランスジェニック作成を含めた、研究材料としての有効な種の探索を行う。以上を、29年度の研究計画とする。当初の研究計画から遅れることとはなるが、進捗が難しい研究計画に固執して、計画が遅々として進まない状況を考慮すると、以上の変更は止むを得ないと考える。
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