研究課題
本研究では、中枢神経系の興奮性情報伝達を担うAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)のシナプス内発現分布とその神経活動に応じた変化を高分解能・高感度に膜タンパク質の分布を可視化できる、独自に開発した凍結割断レプリカ免疫標識法(SDS-FRL)を用いて定量的に解析し、単一シナプスレベルのシナプス機能制御のメカニズムとその生理学的な意義を解明することを目的とする。その際、光遺伝学的操作や種々の薬理学的実験下の海馬及び歯状回のシナプスを解析し、「AMPARのモザイク様シナプス内分布が脳(シナプス)が短時間に新たな状況に適応(記憶)するための構造基盤であること」を証明すると共に、「AMPARのシナプス内発現密度を制御している機構がシナプス機能のメタ可塑性(可塑性発現能)の構造基盤であること」も検証する。H28年度は、計画1)細胞膜ドメイン毎のAMPAR分布の定量的比較、計画2)AMPARサブユニットの分布解析、計画3)AMPARのシナプス内配置、計画4)シナプス可塑性誘導や光遺伝学的神経活動操作時のシナプス内AMPAR局在変化の解析に着手した。また、長期間にわたり安定したAMPAR標識効率が確保できる様、新たな抗AMPAR抗体の作製も開始した。計画1)では、海馬CA1錐体細胞と歯状回顆粒細胞の両方で、高いシナプス外AMPAR標識が観察され、引き続き樹状突起の分枝間の差や細胞体におけるAMPAR標識密度を計測して、神経細胞の細胞膜上分布を明らかにして行く。計画2)では、AMPARを構成するサブユニット、特にGluA1とGluA2サブユニットについて検討し、ほぼ終了した。計画3)は、観察された標識の二次元分布を統計的に評価する手法の開発を共同研究者と連携して進めたが、年度内に完了することができず、H29年度の継続課題となった。計画4)については、光刺激実験の実験基盤を構築した。
2: おおむね順調に進展している
予定していた実験計画の全てに着手し、更に新たな実験も加えた。既に完了した計画も有る一方で、予想以上に時間を要し翌年度も引き続き行う必要がある計画もある。特にシナプス内標識配置の評価には、計算論的アプローチが必須であり、評価法の確立だけでも予想以上の時間と労力を費やした。しかし、既に方法論確立の目途もたっていることから、研究計画の遂行に支障は無く、新たに加えた実験も行っているので、おおむね順調に進展していると判断した。
上記の通り、抗体作製実験を追加したので、引き続き抗体精製などの処理を進め、凍結割断レプリカ標識法に使用して行く。また、その他多くの研究計画はH28年度に引き続き、H29も継続して実行する予定である。
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http://kaibou2.med.lab.u-fukui.ac.jp/