研究課題
本研究では、独自に開発した高分解能・高感度で膜タンパク質の分布を可視化できるSDS処理凍結割断レプリカ標識法(SDS-FRL法)を用いて、海馬及び歯状回のAMPA型グルタミン酸受容体(AMPAR)の神経細胞膜上発現分布と神経活動に応じたシナプス内局在変化を解析し、単一シナプスレベルのシナプス機能制御機構とその生理的な意義を解明する。さらに、光遺伝学的操作や種々の薬理学的処置を駆使し、「AMPARのシナプス内発現密度を制御している機構がシナプスのメタ可塑性(可塑性発現能)の構造基盤であること」を証明すると共に、その分子機構や関連する神経修飾系を明らかにして、「脳の記憶機構の本質」に迫ることを目的としている。平成29年度には、AMPAR特異抗体の作製を完了し、1)細胞膜ドメイン毎のAMPAR 分布の定量的比較、2)AMPAR サブユニットの分布解析、3)AMPAR のシナプス内配置の解析、4)シナプス可塑性誘導や光遺伝学的神経活動操作時のシナプス内AMPAR局在変化について解析を進めた。これらの解析から、細胞膜上に発現しているAMPARの95%がシナプス外の細胞膜上、特に樹状突起細胞膜に発現していること、これらシナプス外AMPARの発現がGluA1サブユニット依存的に制御されていること、シナプス内のAMPARは、シナプス内でクラスターを形成し、このクラスターは確率的に分布すること、そして、シナプス伝達の長期増強に伴いシナプス内AMPAR密度増加が一過性に起こることを突き止めた。
2: おおむね順調に進展している
H28年度には、解析に使用する抗体の不足により、抗体作製実験を追加するなどして計画の遅れが生じたが、29年度中に抗体の確保し、遅れていた計画と29年度に予定していた解析の両方に着手し、遅れの殆どを取り戻した。その結果、1)細胞膜ドメイン毎のAMPAR 分布の定量的比較、2)AMPAR サブユニットの分布解析、3)AMPAR のシナプス内配置の解析、4)シナプス可塑性誘導や光遺伝学的神経活動操作時のシナプス内AMPAR局在変化について解析を進め、それぞれについて、発表可能な新規知見を得ることができたため。
H30年度は、5)AMPAR のシナプス発現に関与する遺伝子を改変した動物のシナプス内AMRAR 局在の解析、6)睡眠―覚醒状態や神経修飾系(コリン系・ドーパミン系・セロトニン系・アドレナリン系・ヒスタミン系)への薬理学的操作や光遺伝学的操作に応じたAMPAR 局在変化を解析であり、項目5)に使用する遺伝子改変動物(CaMKIIa KIマウスやArc遺伝子改変マウス)の試料採取はすでに完了したので、順次AMPAR密度解析を行う。また、これらの実験の進捗状況を考慮して、睡眠覚醒サイクルや各種神経薬理学的処理に応じたAMPARの局在変化の有無の検討を開始する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
eNeuro
巻: 5 ページ: -
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Brain Structure and Function
巻: 223 ページ: 1565-1587
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http://www-n.med.u-fukui.ac.jp/laboratory/brain/