研究課題/領域番号 |
16H04665
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 光則 信州大学, 医学部, 特任教授 (30240039)
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研究分担者 |
柿田 明美 新潟大学, 脳研究所, 教授 (80281012)
吉田 邦広 信州大学, 医学部, 特任教授 (90242693)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多系統萎縮症 / 脊髄小脳変性症 / グリア胞体内封入体 |
研究実績の概要 |
多系統萎縮症(multiple system atrophy, MSA)の病理診断の指標であるグリア胞体内封入体(glial cytoplasmic inclusion, GCI)が,本症の臨床病型と病期進行度を反映する優れたバイオマーカーでもあることを我々は予備的研究から発見した。本研究は検索対象を大規模化し,GCI形成の空間的・時間的変遷パターンを明らかにし,それを基盤とするMSAのステージ分類を確立することを目的とした。 研究対象のMSA剖検例に関して,信州大学4例,新潟大学79例,さいがた医療センター29例をリストアップし得た。臨床歴を再評価し,これら症例を線条体黒質変性症(striatonigral degeneration, SND),オリーブ橋小脳萎縮症(olivopontocerebellar atrophy, OPCA ), Shy-Drager症候群(Shy-Drager syndrome, SDS)の3病型に分類した。また,中枢神経系全般に対するリン酸化α-シヌクレインの免疫染色標本作製とGCIの半定量解析を行い,これまでに61例(全検索予定数の約54%)の病理解析が終了した。 研究の中間段階ではあるが,予想されたようにSNDとOPCAではGCI出現の経時的変遷パターンが全く異なる結果が出つつある。一方,SDS症例のGCIは他の2型と異なる分布を呈する傾向にあった。これらの結果から,本研究が目指すMSA各病型におけるステージ分類確立が可能であることが強く示唆された。 また,本研究の主目的以外の成果として,GCIの形成数・分布が非定形的である症例が少数ながら存在すること,また,従来のMSAの病変分布とは異なる領域にもリン酸化α-シヌクレインの神経細胞内蓄積があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多系統萎縮症の剖検例収集に関して,当初の予定通りに現時点で112例を確保できた。その内訳は,信州大学4例,新潟大学79例,さいがた医療センター29例である。これらの施設より匿名化を経て個人情報以外の臨床歴を入手し,臨床歴の後方視的再評価により症例を線条体黒質変性症,オリーブ橋小脳萎縮症, Shy-Drager症候群の3病型に再分類した。 これら症例の病理診断過程で作成されたパラフィンブロックを用い,中枢神経系全般に対するリン酸化α-シヌクレインの免疫染色標本作製(月平均5例のペース)を進めるとともに,神経変性病変の半定量解析,グリア胞体内封入体の半定量解析を行った。これまでに61例(全検索予定数の約54%)の病理解析が終了した。当初の研究計画では今年度に約50例の解析を行う予定であったことから,計画をやや上回るペースで病理解析が進行している。 研究の中間段階ではあるが,予想されたように線条体黒質変性症とオリーブ橋小脳萎縮症ではグリア胞体内封入体出現の経時的変遷パターンが全く異なる結果が出つつある。一方,Shy-Drager症候群症例のグリア胞体内封入体は他の2型と異なる分布を呈する傾向にあった。これらの結果から,本研究が目指す多系統萎縮症各病型におけるステージ分類確立が可能であることが強く示唆される状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の対象となる多系統萎縮症の剖検例に関して,信州大学4例,新潟大学79例,さいがた医療センター29例をリストアップし得た。これらの剖検例について,中枢神経系全般に対するリン酸化α-シヌクレインの免疫染色標本作製とグリア胞体内封入体の半定量解析を行い,これまでに61例の病理解析が終了した。 平成29年度は残りの未検索例について,平成28年度と同様の解析を進める。神経変性の程度・分布に関する定量解析は,神経細胞脱落の程度を4段階に半定量評価し変性定量デジタルマップを作成する。グリア胞体内封入体(GCI)の定量解析は,抗リン酸化α-シヌクレイン抗体を用いた免疫組織化学でGCIを描出する。GCIの密度を5段階に評価し,各症例の全中枢神経系におけるGCIを半定量解析する。この結果を基に,各症例についてGCI定量デジタルマップを作成する。 GCI定量デジタルマップのデータを各臨床病型ごとに集積し,特定関心領域(線条体・黒質系,橋・小脳系,錐体路など)におけるGCIの経時的変化曲線を作成する。この変化曲線から,各病型のステージ分類を確立する。 本研究は当初の計画通りに進行しており,研究の推進に問題点は認められない。
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