研究課題/領域番号 |
16H04670
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹本 さやか (木村さやか) 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (70372365)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カルシウム依存性蛋白質リン酸化酵素 / 神経回路形成 / 細胞移動 |
研究実績の概要 |
脳室周囲にて誕生・運命決定された神経細胞は適切な脳局所へと移動し神経回路を形成する。細胞移動の異常が精神神経疾患の素地となることが提唱され、分子機構の解明が待望されている。本研究課題では、大脳皮質神経細胞の形づくりの一端(軸索・樹状突起発達)を、Ca2+依存性蛋白質リン酸化酵素、CaMKIが担うという独自の知見を発展させ、胎生期神経回路形成に焦点を当て、Ca2+-CaMKI経路を介した新規シグナリング機構の解明を行うことを目的とし、今年度は下記の項目についての検討を行った。 (1)スライスイメージングを用いたCa2+および細胞装置ダイナミクスの計測:移動中の神経細胞を対象として、スライス培養下におけるイメージングを行い、Ca2+変動と細胞装置の形態・動態変化を検討するための、実験系セットアップを行った。Ca2+変動と細胞形態を多色イメージングし、Ca2+変動を薬理学的に変化させた際の細胞形態変化を定量し、Ca2+によって生じる細胞形態変化の詳細検討を実施した。 (2)Ca2+-CaMKI経路を介した神経回路形成機構の探索:胎生期神経細胞において機能し、神経回路形成の制御に関わる、Ca2+-CaMKI経路の分子の同定を目指し、本経路を構成する分子群の機能促進、機能阻害によって生じる神経回路形成異常の探索を行った。胎生期電気穿孔法により、各分子のノックダウンベクターや、機能獲得体の発現ベクターを導入し、組織学的に検討した。 (3)遺伝子改変動物を用いた検討:上述のCa2+-CaMKI経路を介した神経回路形成機構の探索を遺伝子改変動物を用いた実施するため、主要経路を構成する分子CaMKIのコンディショナルノックアウトマウスを整備し評価に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スライスイメージングをはじめとする実験系を確立し、神経細胞移動を制御するカルシウム依存的分子細胞機構の解明に向けて、薬理学的検討を進めている。また、胎生期電気穿孔法を用いて、特定分子の機能を促進および阻害した際の細胞移動表現型を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Ca2+-CaMKI経路を介した神経回路形成機構の同定を目指し、今年度に引き続き、下記のとおり研究を進める。
(項目1)イメージング結果を定量し、Ca2+変動と細胞移動、細胞形態変化および細胞内器官の変化にどのような相関が認められるか、明らかとしていく。また、スライスイメージングが安定的に実施可能な実験系構築を進めるとともに、多色、長期イメージングに挑戦する。 (項目2)ノックダウンベクターや機能獲得体の過剰発現により、細胞移動の異常が認められることが判明した分子について、細胞形態の詳細検討、細胞内小器官の変化を、免疫組織学的手法により定量する。 (項目3)項目2により、細胞移動制御に寄与することが見出された分子群について、コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討を加えるため、移動中神経細胞のみにおいてノックアウトが可能であるかどうか評価する。 以上の研究項目を推進し、Ca2+-CaMKI経路を構成する分子群の中で、細胞移動において重要な役割を果たす分子実体を明らかとする。
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