研究課題
システインチオール基に過剰なイオウ原子が付加したシステインパースルフィドは、活性酸素、レドックスシグナルを制御する活性イオウ分子種として注目されている。神経系において活性酸素、レドックスシグナルの内在性制御因子である活性イオウ分子種に関する知見はほとんどない。本研究では、神経系における活性イオウ分子の代謝、レドクスシグナル制御機構を解明し、さらに神経変性疾患モデルを用いて発症メカニズムとの関連を明らかにすることを目的としている。平成28年度は、活性イオウ分子種の動態解析を行うために、質量分析による活性イオウ-メタボロミクス法を改良し、より正確な定量が可能となった。また、タンパク質中に含まれているシステインパーサルファイドの解析法の確立、タンパク質合成途中のペプチド鎖に取り込まれているシステインパーサルファイドの解析なども行い、生体内におけるシステインパーサルファイドの生合成経路の解明、ミトコンドリア機能との関連について検討した(Nature Comm. 投稿中)、細菌のシステイン代謝関連酵素を用いた新規安定同位体化合物の合成法の確立(Free Radic Biol Med. 2017)、様々な生体試料中の活性イオウ分子種の総量を測定する方法の確立(Anal Chim Acta. 2017)、抗体を用いた全活性イオウ量の簡易測定法の開発(特願特願2017-31238)、さらに、神経細胞を用いたメチル水銀中毒、アルツハイマー病モデル実験を行い、両モデルにおいて、細胞内の活性イオウ分子種が減少すること、活性イオウ分子種を前処理することにより、神経毒性が軽減されることから、活性イオウ分子種が神経毒性の制御に関わっていることを明らかにした(J. Biol. Chem. 投稿中)。子種が神経毒性の制御に関わっていることを明らかにした(J. Biol. Chem. 投稿中)。
2: おおむね順調に進展している
研究計画として、平成28年度は、①蛍光プローブを用いた活性イオウ分子種の解析、②質量分析による活性イオウ-メタボロミクス、③質量分析による活性イオウ-メタボロミクス、④神経細胞特異的遺伝子ノックダウン-AAV2 レスキュー法を計画していた。①に関しては、2014年に報告した蛍光色素SSP2の改良版で、さらに高感度検出が可能なSSP4を用いて細胞内活性イオウ分子種のイメージング解析を行った。神経細胞を神経毒素であるメチル水銀で処理すると、細胞内の蛍光シグナルが減弱した。この結果は、後述するメタボロミクス解析の結果と一致する。②に関しては、活性「イオウ分子種の抽出時の標識試薬としてモノブロモビマンの代わりに親電子性の低いヨードアセトアミドを用いることで、より定量的な解析が可能となった。また、トリプル四重極型タンデム質量分析装置を購入したため、迅速に解析することが可能となった。研究改良法を用いて神経毒性と細胞内活性イオウ分子レベルを比較したところ、メチル水銀毒性、アミロイドβ毒性と活性イオウ分子種レベルの低下に相関が認められた。③に関しては、新たなタンパク質中の活性イオウ分子標識方法を開発した。すなわち、親電子性の低いヨードアセトアミドと親電子性の高いビオチン標識マレイミドを用い、活性イオウ分子を特異的にビオチン化することで、検出、精製が可能となった。④に関しては、試薬を購入したのみで実際の実験は行っていない。当初の「計画以外にも関連する成果として、細菌のシステイン代謝関連酵素を用いた新規安定同位体化合物の合成法の確立(Free Radic Biol Med. 2017)、様々な生体試料中の活性イオウ分子種の総量を測定する方法の確立(Anal Chim Acta. 2017)、抗体を用いた全活性イオウ量の簡易測定法の開発(特願特願2017-31238)などの成果が上がっている。
平成28年度に計画し実施できなかった神経細胞特異的遺伝子ノックダウン-AAV2 レスキュー実験を神経細胞、マウスを用いて行う。細胞実験では、PC12細胞、SH-SY5Y細胞、90%以上の純度の初代培養神経細胞が調製可能なラット小脳ニューロンを用いる。細胞を市販の標的遺伝子-Accell-siRNA(GEヘルスケアサイエンス)とインキュベートし遺伝子ノックダウンを行う。また、標的遺伝子搭載アデノ随伴ウイルスを作製し、レスキュー実験を行う。個体では、イソフルラン麻酔下でマウスを脳定位固定装置に保定し、Accell-siRNAをステンレスパイプとマイクロシリンジポンプを用いて局所投与する。また、標的遺伝子搭載AAV2を同部位に同手技で投与しレスキュー実験を行う。さらに平成29年度以降に予定しているアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータを用いてレドックスシグナルを破綻させ、上述の方法で生体内の活性イオウ分子種の動態を解析する。内因性または外因性の活性イオウ分子種のレドックスシグナル破綻に及ぼす効果も検討する。また、遺伝子改変アルツハイマー病モデルマウスを用いて、行動評価(オープンフィールド試験、Y字迷路、恐怖条件づけ試験)、脳病理評価(脳切片を用いた免疫組織染色、老人班の形成など)を行いアルツハイマー病の発症と進行を評価し活性イオウ分子種の動態との関連性を解析する。
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