研究課題/領域番号 |
16H04675
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高森 茂雄 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (10397002)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経伝達物質・受容体 / シナプス小胞 / シナプス伝達 |
研究実績の概要 |
シナプス終末からの神経伝達物質の放出は、我々哺乳類脳内のシグナル伝達に必須な過程であるが、シナプス小胞を取り巻く諸処の素過程は、細胞内反応であるがために測定方法に限界があり、詳細は不明な点が多い。本研究課題では、各種pH感受性蛍光プローブを応用した小胞イメージング解析を行い、以下の研究成果を得た。
【1】抑制性神経伝達物質GABAのシナプス小胞再充填機構の解明:抑制性GABAニューロン選択的に黄色蛍光タンパク質を発現するマウス海馬神経初代培養細胞に赤色蛍光小胞内pHプローブを発現させ、GABAを含むシナプス小胞内のpHが高いこと、GABA再充填過程において特徴的な小胞内pH動態を示すことを明らかにした。また、これらの特徴はGABA再充填過程と密接に関係しており、GABAの再充填機構や再充填速度について新規の知見を得た。この研究成果は、PNAS誌に発表した。
【2】SNARE多様性によるシナプス小胞動態制御:シナプス小胞のプロテオミクス解析の結果から、シナプス小胞にはエキソサイトーシスに必須なシナプトブレビンに加え、非神経細胞ではエンドソームに存在するSNAREタンパク質群が多数存在することが示唆された。我々はエンドソーム由来SNAREタンパク質群にpHプローブを融合させ、それらのシナプス終末における動態特性を網羅的に解析した。その結果、全てのエンドソーム由来SNARE自身がシナプス終末で自発的にリサイクリングしていることに加え、シナプス小胞の自発的エキソサイトーシスをも促進させる群と、シナプス小胞の自発的および刺激依存的エキソサイトーシスの双方を著しく抑制する群に大別できることが判明した。一連の実験結果は、神経伝達物質放出の時空間的特性がエンドソーム由来SNAREの種類によって制御されている可能性を強く示唆している(未発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心的なテーマの一つであるGABA再充填機構に関する研究を論文としてまとめることができたのは、当初の予定通りである。また、他の研究項目も概ね順調に進行しており、最終年度に向けて論文投稿の準備に取り掛かっている段階である。従って、本研究計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進捗状況は、上記の通り順調であるが、連携研究者1名が異動したため当研究課題への参画が限定的となった。後任スタッフの補充、試料や実験技法の移管を効率的に進め、研究体制の強化を計っていく方針である。また、エンドソーム由来SNAREタンパク質の可視化解析を推し進め、論文化することに注力する。
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