研究課題
妊娠初期のヒト子宮内膜は生理的に低酸素状態であること、マウス着床期子宮において低酸素で誘導される転写因子として広く知られるHIF1αおよびHIF2αが子宮内膜に発現していることが報告されている。子宮内膜の低酸素状態によって、HIFが子宮内膜に誘導されて作用すると推測されるものの、その役割は不明であった。本研究では、マウスモデルを用いて子宮の低酸素とHIFの意義を調べた。野生型マウスに対し低酸素プローブを用いて着床直前の子宮内膜が低酸素であり着床後酸素化が促進されることを示した。次に子宮のHIFに着目し、HIF1α-loxPマウスまたはHIF2α-loxPマウスをPgr-creマウスと交配させて子宮のHIF1α欠損マウス(1αKO)およびHIF2α欠損マウス(2αKO)を作成し、妊娠の表現型を調べたところ、2αKOからは産仔が1匹も得られず、1αKOは産仔数が減少することが判明した。完全な不妊である2αKOの異常が妊娠のどの段階で起こっているのかを調べたところ、子宮内膜への胚接着が認められるものの子宮内膜管腔における胚接着位置の子宮血管側への変位が起こっており、胚接着後に胚発育停止が認められた。着床直後の着床部位では着床に必須のサイトカインであるLIFの発現低下を認めたため、2αKOに対してLIFを投与したところ、着床部位の改善は認めたがその後の胚発育は改善しなかった。以上の結果から、着床期子宮内膜が低酸素であること、子宮のHIFが胚接着位置の決定、着床後の胚発育に関与していることが明らかとなった。本研究により、子宮の低酸素がHIFを誘導し着床を調節している可能性が示された。
1: 当初の計画以上に進展している
マウスモデルを用いた研究が順調に行われており、その成果も順調に得られている。これらの成果をさらに発展させ、次年度以降の研究の更なる進展が期待できる。
順調に進展し成果を上げているため、研究計画通りに進める予定とする。
平成29年度日本内分泌学会研究奨励賞、廣田泰。平成28年度日本生殖内分泌学会学術奨励賞、大学院生:平岡毅大。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
Endocrinology
巻: 158 ページ: 84-97
10.1210/en.2016-1511
J Reprod Immunol
巻: 119 ページ: 44-48
10.1016/j.jri.2016.12.002.
JCI Insight
巻: 1 ページ: e87591
10.1172/jci.insight.87591
J Clin Invest
巻: 126 ページ: 2941-2954
10.1172/JCI87715.
Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol
巻: 207 ページ: 157-161
10.1016/j.ejogrb.2016.10.053.
Fertil Steril
巻: 107 ページ: 167-173.e2.
10.1016/j.fertnstert.2016.09.036.
巻: 106 ページ: 1432-1437.e2.
10.1016/j.fertnstert.2016.07.1077.
Am J Reprod Immunol
巻: 76 ページ: 193-198
10.1111/aji.12540.
Hum Reprod
巻: 31 ページ: 2042-50
10.1093/humrep/dew143.
J Clin Endocrinol Metab
巻: 101 ページ: 2371-2379
10.1210/jc.2016-1515.
Mol Cell Endocrinol
巻: 428 ページ: 161-169
10.1016/j.mce.2016.03.032.
巻: 75 ページ: 486-492
10.1111/aji.12489.
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20160603-1.pdf