研究課題
哺乳類の脳内には多様なガングリオシドが豊富に存在するが,脳神経系での機能についてはよくわかっていない。我々はガングリオシドの合成起点となるラクトシルセラミド(LacCer)の脳神経系での合成は,2つのガラクトース転移酵素β4GalT-5と-6が担っていることを明らかにした。両遺伝子を脳神経系で欠損したダブル欠損(DKO)マウスは,生後2週齢から顕著な運動失調を示し,4週齢までにすべて死亡することがわかったので,このマウスの脳神経系の解析を引き続き行った。これまでの結果をまとめて論文を投稿したところ,いくつかの追加実験を求められたので以下の実験を行った。1)大脳皮質の神経細胞は未熟な形態を示していたので,未熟な神経細胞マーカーであるTbr1の染色を行ったところ,DKOマウスでは大脳皮質の上層部にもTbr1陽性神経細胞が存在した。また,DKOマウスのNeurosphereはタンパク質合成阻害剤に高感受性を示し,このことからも神経細胞は未熟な状態にあることがわかった。2)DKOマウスのNeurosphereはラミニンへの接着性が顕著に低下しており,Neurosphereから分化させた神経細胞は神経突起の伸長や分岐が障害されていた。NGFの受容体のTrkAやその下流のLynのリン酸化が減弱していたことから,DKOマウスの神経細胞ではガングリオシドが欠損したために,増殖のシグナル伝達が減弱したことが示唆された。3)九州大学の伊東先生,沖野先生との共同研究で,DKOマウスの脳での様々なスフィンゴ糖脂質の定量を行い,LacCer合成酵素が欠損したことによるスフィンゴ糖脂質合成に与える影響を明らかにした。以上の結果をまとめて再投稿し,PLOS Geneticsに論文が掲載された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS Genetics
巻: 14 ページ: e1007545
10.1371/journal.pgen.1007545
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/research/index.html