研究課題
後天性免疫不全症候群(エイズ)流行の初期からエイズの病原ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の主要標的細胞としてCD4陽性Tリンパ球およびマクロファージが知られてきたが、HIV感染症におけるマクロファージ感染の意義は不明な点が多い。本研究では、個体レベルの感染におけるマクロファージの意義を、霊長類エイズモデル、特に感染後期にほぼ純粋なマクロファージ感染が成立する高病原性サル/ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)を用いて、マクロファージ感染とエイズ病態進行との関係を明らかにすることを目的とした。今年度は5頭のアカゲザルにSHIV-KS661株を接種し、マクロファージが主要感染細胞となる感染後期に多剤併用療法を適用し、前年度までに観察された血中ウイルス量の3相性減衰の再現を目指した。3頭の動物ではウイルス感染により血中のリンパ球が枯渇しなかったため、継時的に生検したリンパ節を組織化学的検索したところ、主要感染細胞はリンパ球であった。残り2頭は血中リンパ球が急性感染期に枯渇し、マクロファージが主要感染細胞となった。うち1頭は急速に病態が進行し、投薬中にエイズ様症状(食欲廃絶と下痢)を起こしたため安楽殺した。残る1頭で3相性減衰が再現された。非治療個体および治療開始前、治療開始直後及び治療終了時の各動物の組織を組織化学的に解析したところ、治療開始前の状態ではMAC387抗原陽性M1タイプマクロファージおよびCD163抗原陽性M2タイプマクロファージの両方がウイルス感染したが、治療により血中ウイルス量が1000コピー/mlまで減少した第3相ではM2タイプマクロファージのみでウイルスが維持されていた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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