研究課題/領域番号 |
16H04683
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
堀江 恭二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30333446)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ES細胞 / 多能性 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
我々は、蛍光蛋白Venusをレポーターに用いて、マウスES細胞で発現がON/OFFを繰り返す遺伝子を同定した。さらに、この遺伝子のON/OFFに応じて、ES細胞の細胞集塊の形態が変化することも見出した。これより、この遺伝子の発現の変動は、マウスES細胞の多能性の変動を反映する可能性が示唆された。さらに、Venusが挿入されたゲノム領域には、類似の配列をもつ遺伝子がクラスターをなして存在することも見出し、このクラスター全体がES細胞の多能性を制御している可能性も示唆された。 本年度はまず、ES細胞の多能性の変動状態を遺伝子レベルで記載するために、Venus陽性ES細胞と陰性ES細胞をcell sorterで分離後、RNA-seq法によって全遺伝子の発現レベルを定量し、Venus陽性、陰性細胞間での違いを特定した。発現に差のある遺伝子群を、遺伝子オントロジー解析によって分類したところ、Venus陽性細胞と陰性細胞の性状の違いが、遺伝子の機能的な差異によって説明できることがわかった。 さらに、Venus挿入部位の遺伝子クラスターの機能を調べるための、CRISPR/Cas9システムによってクラスター全体を欠失することを試みた。まず、遺伝子クラスターの上流域、下流域の境界を明らかにするためにゲノム配列を詳細に解析し、約2Mbの領域に限定した。次に、この領域の上流域と下流域にCRISPR/Cas9システムで用いるguide RNAを3つずつデザインし、guide RNA発現ベクターを構築した。今後、各guide RNAのゲノム切断効率を調べ、切断効率の高いguide RNAの組み合わせによって、遺伝子クラスター全体を欠失させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光蛋白Venusを用いたcell sortingの際に、Venusの発現レベルが前年度までの予備実験と異なることが判明したため、実験条件の再検討が必要となり、数ヶ月の遅延が生じたが、その後は順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、Venus陽性・陰性ES細胞の性状の違いをマウス個体発生の観点から明らかにする。このために、Venus陽性および陰性のES細胞を、マウス初期胚(8細胞期胚、胚盤胞など)へ注入してキメラマウスを作製し、ES細胞のキメラマウス個体への寄与率を評価する。 遺伝子クラスターの機能解析については、平成28年度で作製したguide RNA発現ベクターを用いて、本遺伝子クラスター全体の欠失を試みる。
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