研究課題
本研究の目的は1)~3)に述べる実験系の構築である。1)脳に発現する組織特異的遺伝子のプロモータ3種類と3種類の蛍光蛋白質をそれぞれ使い分けることによって、脳の組織を3種類の色で分染可能なトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、最終的な標的となる脳神経細胞にはさらにヒトのジフテリア毒素受容体(DTR)遺伝子が発現できるようにしておく。2)その後、そのTgマウス個体にジフテリア毒素(DT)を直接腹腔内に投与することにより、最終標的となる脳・神経細胞を脳内から特異的に除去する。3)この除去によって生じる記憶や行動などの異常を通じ、その標的細胞の機能を解明する。この方法が確立できると脳・神経細胞にとどまらず、体内の様々な組織・器官に応用ができる。例えば、複雑な構造と多種類の細胞群から成り立つ聴覚系は本方法の応用には最適である。それ故、本計画では感覚器のうち、聴覚機能の中枢である内耳組織も研究対象とした。本年度は、3種類の蛍光蛋白と、Cre/loxP系、Dre/rox系を組み合わせ、2種類の組織特異的プロモーターで制御できるTRECKベクター系の開発と改良を行なった。培養細胞を用いた蛍光蛋白の識別発現には成功したため、現在トランスジェニック(Tg)マウスの作製を行なっている。現在までに、数系統のTgマウスの候補が獲得され、それらのマウスの子孫が確認され次第、脳での蛍光蛋白の発現の有無を観察し、使用目的に耐えるか否かを検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
3種類の蛍光タンパク質とCre/loxP系、Dre/rox系を組み合わせたTRECKベクターの構築、培養細胞を利用した蛍光蛋白発現系の成功、Tg候補マウスの獲得など、研究はおおむね順調に進捗している。
次年度は、Tgマウスの獲得に全力を傾ける。また、今後必要となるDreドライバーマウスの作製も平行して行なう。ただ、マウス個体を利用した発現系では、種々の未知の理由から蛍光蛋白が発現しないことも多いため、複数の組織特異的プロモーターを利用することや、Tgマウス以外にノックイン(KI)マウスの系を開発し、その系による蛍光蛋白の発現を確認する系も立ち上げている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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