研究課題/領域番号 |
16H04690
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
千葉 奈津子 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50361192)
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研究分担者 |
城田 松之 東北大学, 医学系研究科, 助教 (00549462)
渡邊 利雄 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60201208)
吉野 優樹 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60755700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞分裂 / がん関連分子 |
研究実績の概要 |
BRCA1(Breast Cancer 1)は、その変異により遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)を引き起こす癌抑制遺伝子で、近年は難治性乳がんのトリプルネガティブ乳がんとの関わりが注目されている。BRCA1はBARD1とヘテロダイマーを形成し、ユビキチン化能を持つ。これまで、BRCA1のDNA二本鎖切断修復経路におけるDNA修復能が注目されてきたが、BRCA1は分裂期には紡錘体極となり、娘細胞への均等な染色体分配を担う細胞内小器官で、ゲノム安定性に重要な機能を担う中心体にも局在し、中心体数の制御や中心体依存性の微小管伸長にも関わる。我々は、プロテオミクス解析によりBARD1に結合する新規分子Obg-like ATPase 1 (OLA1)を同定した。これまでの研究により、OLA1が中心体と細胞質分裂を制御することが明らかになった。本研究では、これまでの研究で同定したOLA1の中心体制御能に異常を生じる変異体などを用いて、OLA1の中心体制御能と細胞質分裂制御能をさらに解析し、細胞内局在部位に依存した複合体形成の変化と中心体制御、細胞質分裂制御の分子機構を解明する。また、新規BRCA1/OLA1結合分子の機能解析も同時に行う。また、既に作製したOla1ノックアウトマウスを用いて、個体レベルでの発がんメカニズムを解明する。さらには、多数のがん細胞株や臨床検体を用いて、OLA1とその関連分子のがんの診断や治療効果予測のバイオマーカーや分子標的としての可能性、有用性を探索する。これらの研究によって、がんの診断法、予防法、治療法の開発のための分子基盤を築く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OLA1の細胞周期における中心体内局在の変化をBRCA1と比較して解析したところ、OLA1は、BRCA1と同様に、G2期には中心体局在が減少することが明らかになり、DNA損傷により、その局在パターンが変化することが明らかになった。また、OLA1の多数の変異を用いた解析により同定した、中心体数の制御能に異常を来す変異体について、分子間相互作用を解析したところ、BARD1との直接結合能に異常を来すことが明らかになった。リン酸化候補部位については、疑似リン酸化状態の変異体を作成して解析したところ、BARD1との結合能が回復し、中心体数の制御能も部分的に回復することが明らかになった。また、OLA1のがん由来の変異でも、BARD1との結合能が消失し、BARD1との結合能ががん抑制能に重要であることが示唆された。また、BARD1のがん由来の変異によって、OLA1との結合能と中心体局在能が障害されることも明らかになった。さらに、がんで高発現が認められるBARD1のアイソフォームが、高発現で中心体数の増加を引き起こすことが明らかになった。 新規BRCA1/OLA1結合分子の機能解析については、この分子がBRCA1の中心体局在を制御することが明らかになった。また、各ドメインの欠失変異体を用いてその機能を解析したところ、C末端のドメインが、その中心体局在と中心体制御能に重要であることが明らかになった。また、がん由来の変異体でその機能が障害されることも明らかになった。 Ola1ノックアウトマウスを用いた解析では、腫瘍発生が明らかになり、この腫瘍に中心体異常が観察された。また、この腫瘍形成に、性ホルモンが関与することが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究により、OLA1が、細胞周期毎に中心体での発現量が変化することが明らかになったため、さらに、G1期とS/G2/M期に蓄積する分子に蛍光タンパク質を付加したFucci (Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator)プローブで、G1期とS/G2/M期を明確に区別し、母中心小体のマーカーCep170や両中心小体のマーカーcentrinとの免疫染色を行う。結果は、血清飢餓やThymidine処理などによる同調培養による方法でも確認する。 また、OLA1がリン酸化で制御されることが明らかになったため、中心体複製で重要な働きをするPlk1、Plk4、Aurora Aキナーゼで、OLA1が制御されるかどうかを解析する。 新規BRCA1/OLA1結合分子の機能解析については、前年度の研究により、C末端のドメインが重要であることが明らかになったため、この領域でのがん由来の変異体での機能変化を明らかにする。 OLA1のノックアウトマウスを用いた解析では、腫瘍形成における性ホルモンが関与の分子メカニズムを解明するため、中心体制御能における性ホルモンの関与を細胞レベルで解析し、発がんメカニズムを解明する。また、放射線照射や抗がん剤投与によるOla1ノックアウトマウスの腫瘍形成への影響を解析する。 OLA1、新規BRCA1/OLA1結合分子、BARD1のアイソフォームのバイオマーカーや分子標的としての有用性を検討するため、がん細胞株で、これらの分子の強制発現や発現抑制における、抗がん剤感受性の変化を検討する。抗がん剤は、Auroraキナーゼ阻害剤、Plkキナーゼ阻害剤、微小管阻害剤に加えて、PARP阻害剤やDNA障害性薬剤に関しても検討する。
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