研究課題
癌関連遺伝子の変異や発現異常が癌の発症・進展に深く関わっていることは良く知られている。大多数の大腸癌ではWntシグナル経路の異常亢進が起こっており、癌遺伝子c-Mycが細胞の癌化に関わる最も重要なWntシグナル標的因子の一つであると考えられている。本研究では、Wnt/c-Myc経路の標的因子として同定した新規lncRNA:MYUを手掛かりとして、Wnt/c-Myc経路が誘導する細胞癌化機構の理解に新たな局面を開き、大腸癌の新しい診断法や分子標的治療法開発の為の足掛かりを得ることを目的としている。これまでの研究によってMYUはRNA結合タンパク質hnRNPKと結合し、hnRNPKはWnt/c-Myc/MYU/CDK6カスケードの構成因子として働いていることを示唆する結果を得ていた。また一方で、CDK6は細胞周期のG1期からS期への移行に必須の役割をしていることは良く知られている。そこで、フローサイトメトリー(FACS)を用いて細胞内DNA量を測定することによって、本経路構成因子のノックダウンが細胞周期の進行に与える影響を検証した。その結果、β-catenin, c-Myc, MYU, hnRNPKもしくはCDK6をノックダウンすると細胞周期のG1期からS期への進行が抑制される(G1 arrest)ことを見出した。さらに、これらのG1 arrestはCDK6の過剰発現によってレスキューされることを確認した。これらの研究成果から、Wnt/c-Myc/MYU/hnRNPK/CDK6カスケードの存在と細胞周期制御における重要性が明らかになった。これまでに得られている知見と考え合わせると、本経路は癌治療薬の有望なターゲットに成り得ると期待できた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、WntからlncRNA:MYUを経てCDK6へ至る経路の存在と細胞周期制御における重要性を明らかにすることができた。本研究成果は開始当初からの到達目標の一つであり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
前年度までの研究を継続し発展させる。
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