研究課題
BRCA1、BRCA2 のDNA損傷応答による「ゲノム安定性維持機能」を標的とした乳がん新規治療法の開発を目的とする。DNA損傷応答は、発がんを予防する一方で、抗がん剤のDNA損傷を修復して細胞毒性を緩和し、がん細胞の治療抵抗性獲得に働く。そこで、DNA損傷応答を標的とし(抑制し)細胞死を誘導する新規治療法が考えられる。具体的には、DNA2本鎖切断に対する損傷応答能が低いBRCA1・2変異陽性乳がんを対象とし、合成致死パートナー探索で得られる新たなパートナー情報を利用して、DNA損傷応答能を相乗的に抑制し細胞死を誘導する新規治療法の開発を目指す。我々は、BRCA2欠損とパクリタキセル(PTX)との間の潜在的な合成致死性の関係を報告した。今日まで、BRCA2-siRNAノックダウン細胞のPTX処理は、対照siRNA処理細胞と比較して、微小管ポリマー質量を有意に増加させることができる。しかし、合成致死性の根底にあるメカニズムは不明である。 BRCA2タンパク質が微小管細胞骨格複合体を形成するかどうかを調べるために、T47-D細胞溶解物中の抗BRCA2抗体を用いて免疫沈降実験を行った。質量分析による免疫沈降物の分析は、微小管安定化を促進するために微小管に直接結合する微小管関連タンパク質(MAP2、MAP4およびTau)を同定した。さらに、BRCA2の枯渇後の細胞ベースおよびインビトロでのチューブリン重合アッセイは、MAP4によって微小管安定化が誘導されたことを明らかにした。この研究では、MAP4をBRCA2の新しい結合パートナーと同定し、PTXおよびMAP4のチューブリンアセンブリに対する相乗効果が微小管安定化に寄与することを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的である「BRCA2欠失細胞に対する微小管脱重合阻害剤の合成致死誘導メカニズムの解明」に対し、微小管脱重合阻害剤パクリタキセルが、微小管安定化を促進するため協働で微小管に直接結合する微小管関連タンパク質(MAP2、MAP4およびTau)を同定した。また、BRCA2の枯渇後の細胞ベースおよびインビトロでのチューブリン重合アッセイは、MAP4によって微小管安定化が誘導されたことを明らかにし、さらに詳細な検討を進めている。これにより「おおむね順調に進展している」と判断した。
これまでに引き続き、計画通り、BRCA2欠失細胞に対する微小管脱重合阻害剤の合成致死誘導メカニズムの解明を進めると同時に、DDR関連分子の治療感受性予測因子としての有効性を評価を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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