研究課題
「BRCA2欠失細胞に対する微小管脱重合阻害剤の合成致死誘導メカニズムの解明」に対し、微小管脱重合阻害剤パクリタキセルが、微小管安定化を促進するため協働で微小管に直接結合する微小管関連タンパク質(MAP2、MAP4およびTau)を同定した。また、BRCA2の枯渇後の細胞ベースおよびインビトロでのチューブリン重合アッセイにより、MAP4によって微小管安定化が誘導されたことを明らかにした。さらに、平成29年度は、新たな治療標的の探索を行った。トリプルネガティブ乳がんには、BRCA1変異が陽性で、プラチナ製剤及びポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬によく応答する症例が存在する。しかし、既にPARP阻害薬治療における耐性獲得が報告され、HR機能が維持されているがんに対し、HR関連分子を阻害しHR機能を低下させた後、PARP阻害薬やプラチナ製剤等のDNA傷害性抗がん剤により治療する新たな方法も研究されている。我々は、これまでBRCA2の細胞内機能の解析を進めてきた。BRCA2には、2つの核移行シグナル(nuclear localization signal: NLS)が存在する。NLSをもつ核タンパクは、インポーティンα(別名KPNA)に結合して核膜孔を通過する。ヒトKPNAには7種類のサブタイプ(KPNA1-7)があり、今回、我々は、BRCA2とKPNA7が結合し、核に輸送されることを明らかにした。さらに、DNA損傷修復は核内で行われることから、KPNA7をノックダウンするとBRCA2の核移行が阻止され、BRCA2が核内で機能できず、PARP阻害薬による合成致死性が誘導されることを見出した。これは、BRCA2の機能を抑制する「BRCAness」を作り出す新しい試みであり、新たながん治療を生み出す可能性が期待できる
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的である「BRCA2欠失細胞に対する微小管脱重合阻害剤の合成致死誘導メカニズムの解明」に対し、微小管脱重合阻害剤パクリタキセルが、微小管安定化を促進するため協働で微小管に直接結合する微小管関連タンパク質(MAP2、MAP4およびTau)を同定、また、BRCA2の枯渇後の細胞ベースおよびインビトロでのチューブリン重合アッセイは、MAP4によって微小管安定化が誘導されたことを明らかにした。さらに、平成29年度は、これまでに解明したBRCA2の細胞内輸送メカニズムの情報から、新たな治療標的の探索を行った。これにより「おおむね順調に進展している」と判断した。
引き続き、計画通り、BRCA2欠失細胞に対する微小管脱重合阻害剤の合成致死誘導メカニズムの解明を進めると同時に、DDR関連分子の治療感受性予測因子としての有効性を評価を進めていく。また、BRCA2の核内移行システムの阻害による新規治療法開発を目指す。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
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