研究課題
既にPARP阻害薬治療における耐性獲得が報告され、HR機能が維持されているがんに対し、HR関連分子を阻害しHR機能を低下させた後、PARP阻害薬やプラチナ製剤等のDNA傷害性抗がん剤により治療する新たな方法も研究されている。我々は、これまでBRCA2の細胞内機能の解析を進めてきた。BRCA2には、2つの核移行シグナルNLSが存在する。NLSをもつ核タンパクは、インポーティンα(別名KPNA)に結合して核膜孔を通過する。ヒトKPNAには7種類のサブタイプ(KPNA1-7)があり、今回、我々は、BRCA2とKPNA7が結合し、核に輸送されることを明らかにした。さらに、DNA損傷修復は核内で行われることから、KPNA7をノックダウンするとBRCA2の核移行が阻止され、BRCA2が核内で機能できず、PARP阻害薬による合成致死性が誘導されることを見出した。これは、BRCA2の機能を抑制する「BRCAness」を作り出す新しい試みであり、新たながん治療を生み出す可能性が期待できる。この結果を踏まえ、KPNA7を阻害する低分子化合物のスクリーニングを行った。核内輸送蛋白であるKPNA7は、核に局在する。そこでGFP-KPNA7の安定発現株を作製し、顕微鏡下のGFP蛍光局在を指標に、GFP-KPNA7の核内局在を阻害する化合物のスクリーニング系を構築した。臨床への早期応用を考慮し、機能既知化合物ライブラリー(本学の約1,600種低分子化合物ライブラリー)を用いたスクリーニングの結果、BRCA機能正常細胞に対しGFP-KPNA7の核内局在を阻害する2種の化合物を検出した。次に、BRCA機能正常細胞に対するこれらの化合物とPARP阻害剤併用による合成致死誘導効果を解析し、in vitro 実験で誘導効果を示す結果を得ている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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