研究課題/領域番号 |
16H04694
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
櫻井 宏明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00345571)
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研究分担者 |
小澤 龍彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10432105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん / 細胞 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
チロシンキナーゼ型受容体の非定型的リン酸化について検討した。まず、リガンド刺激時のEGFRのリン酸化制御機構として、新たにp38によってリン酸化される細胞内ドメイン内のSer-1015に対するリン酸化抗体を作製した。ウェスタンブロットにより、リガンドやサイトカイン刺激時に効率的にリン酸化が起こっていることがわかった。また、免疫細胞染色により、細胞内にエンドサイトーシスしたEGFRがリン酸化されていることがわかった。これらの結果は、p38を介した非定型的なEGFRのエンドサイトーシスが起こっていることを示す重要な結果である。 ErbB4については、ERKを介した膜近傍ドメイン内のThr-674のリン酸化がチロシンキナーゼ活性のフィードバック阻害に関与することを明らかにした。このリン酸化部位は、EGFRやErbB2にも保存されており、ErbB受容体の共通のフィードバック阻害機構の存在が示された。また、ErbB4の場合はC末端側のSer-1021/1026のリン酸化がERKを介して起こっていること、これら部位もフィードバック阻害機構に関与していることを示唆する結果が得られた。 EphA2のC末端Ser-897リン酸化は、がん細胞の運動能を制御することを報告している。本年度は、細胞運動能に関与する上皮間葉転換(EMT)誘導時のEphA2発現について検討した。肺がん細胞株A549をTGF-βで刺激した時のEphA2の発現を検討した結果、EGFRやFGFR1を介したMEK/ERK経路の活性化がEphA2の発現を強く誘導することがわかった。また、Ser-897リン酸化も誘導された。細胞染色の結果、リン酸化されたEphA2はラメリポディア様構造に限局して発現していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の最も重要なEGFRの非定型的リン酸化機構に関して、新たな抗体の作製に成功し、メカニズム解明に大きく前進した。また、EphA2のがん悪性化における役割解明においても、EMT化との関連性を見出した。その他のRTKの解析についても一定の前進があることから、一部計画が未達の課題もあるが全体計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、計画通り解析を進めていく予定であるが、論文化を達成することを最大目標として取り組むとともに、進捗の期待される課題により一層注力する。
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