研究課題/領域番号 |
16H04695
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
清木 元治 金沢大学, 医学系, 特任教授 (10154634)
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研究分担者 |
滝野 隆久 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (40322119)
金子 周一 金沢大学, 医学系, 教授 (60185923)
越川 直彦 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 部長 (70334282)
坂本 毅治 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70511418)
山下 太郎 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90377432)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝臓がん / がん幹細胞 / 浸潤転移 / 膜型マトリックスメタロプロテアーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では研究代表者等がこれまでがん細胞の増殖、浸潤、転移などの悪性形質を制御するハブ分子として着目してきたMT1-MMPを中心とした分子経路が実際のヒト肝臓がんにおいてどのように機能しているかを明らかにしようとしている。一方で、肝臓がんは原因となる遺伝子変異も含めて多様であり、組織におけるがん細胞もその遺伝子発現の特徴などから不均一性が認められているので、不均一性との対応関係の解明も重要である。 研究は肝臓がんの不均一性を反映する患者由来がん細胞株の解析を手始めに行い、そこで得られた知見の確認を臨床材料を用いて行う。さらには、病態との因果関係の確認のために動物モデルを用いた研究に展開することを計画する。 H28年度は、ヒト肝臓がんの幹細胞様特質を保持した2系統の代表的な細胞株を複数用いた解析を行った。MT1-MMP、EpCAM、CD90、Mint3、FIH-1、Lnγ2、EphA2の発現をたんぱく質レベルで確認した。MT1-MMPは腫瘍系性能の高いEpCAM陽性細胞株では全例発現していたが、造腫瘍性は弱いが浸潤性の高いCD90陽性群では細胞による相違が見られた。Mint3およびFIH-1は全例で発現しており、MT1-MMPのノックダウン実験により、MT1-MMPの発現によりMint3経路は駆動していることが考えられた。しかし、MT1-MMP/Mint3経路の阻害とがん幹細胞様形質との機能的な相関は見られなかった。EphA2の発現レベルは細胞による変動が見られた。MT1-MMPの基質の一つであるLnγ2単鎖の発現はCD90陽性細胞群で亢進している傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者由来のがん細胞株の収集と解析が順調にスタートした。これまでに蓄積している解析データとの照合と関連づけも出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
1)細胞株での知見と実際の肝臓かん組織での発現の関連に着目した研究を進める。このことにより、平成30年度で主として展開する予定のマウスモテルを用いた解析の根拠を固める。2)患者組織は、病理的な組織形態と着目する分子を発現する細胞の免疫組織化学的な解析を中心として進める。必要に応して単一細胞解析を行うことも検討し、転写と転写産物の存在の一致を確認する。3)また、着目する分子経路と相関する遺伝子の発現に着目して、細胞内の他のシグナルネットワークとの連携に関わる新たな分子の同定を目指す。4)ここで同定された分子との機能的な連関に関しては細胞株を用いた解析に戻って解析を続ける。また、着目する分子経路の機能とがん幹細胞性の発現およひ維持に関する解析も細胞株を用いて解析する。5)分子とがん細胞の悪性形質との関係は、細胞株のマウス移植モデルで検討を行う。 6)肝臓がんの腫瘍マーカーとしてMT1-MMPの基質の一つであるLnγ2に着目しており、HCSCの細胞タイプによって特徴的な発現パターンを示すことを見出した。同分子についてもがん組織での発現解析を進めることにより 、腫瘍マーカーとしての有用性の根拠を明らかにする。Lnγ2の発現と細胞のがん化およびがん幹細胞性の獲得についても細胞株を用いた解析を継続する。
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