研究課題
膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1型(MT1-MMP)は、がんの増殖、浸潤、転移に関わる細胞機能を、複数の分子経路を介して促進する。しかし、がん組織における同分子 と分子経路の発現は均一ではない。一方で、がん細胞の不均一性や変幻性が、がんの悪性化、幹細胞化、薬剤耐性に関わることが知られている。本研究では、肝臓がんのがん幹細胞様細胞(HCSC)に着目し、MT1-MMP の発現と同分子により駆動される分子経路の種類と機能を解析した。肝細胞がんにおける間葉系がん幹細胞マーカーであるCD90陽性肝がん細胞では、上皮系がん幹細胞マーカーであるEpCAM陽性肝がん細胞に比し、MT1-MMPをコードするMMP14遺伝子発現が高い傾向にあることを見出した。さらに免疫チェックポイント分子であるPD-L1、PD-L2の遺伝子発現が高い傾向にあり、このことは上皮間葉転換プログラムとMT1-MMPの活性化、免疫監視機構からのエスケープ現象との関連を示唆した。MT1-MMPを発現する肝細胞がんではHIF-1の活性化が観察されおり、この活性化を仲介するMInt3の発現レベルに高い傾向があることが確認できた。また、肝がん患者の血清中ではラミニンγ2が単鎖状態で分泌されていることを見出しており、腫瘍マーカーとしての有用性を検討中である。ラミニンγ2単鎖が特にCD90陽性肝がん細胞株で培養上清中に高レベルで分泌されることを確認した。CD90陽性肝がん細胞では、EMT化が起こっており、浸潤性が高いと考えられ、実際にマウスでの転移能は高い。新規浸潤能解析装置を考案し、浸潤性及び非浸潤性細胞を生きたまま分別することを可能にした。MT1-MMP発現細胞は浸潤性が亢進しており、MMP-2のみならずMMP-9の活性化も亢進していることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
研究分担者間での研究材料の交換と連絡がスムーズに進んでおり、研究計画はほぼ順調に進んでいる。
肝細胞がんにおける間葉系がん幹細胞マーカーであるCD90陽性肝がん細胞では、上皮系がん幹細胞マーカーであるEpCAM陽性肝 がん細胞に比し、MT1-MMPをコードするMMP14遺伝子発現が高い傾向にあることを見出している。1)肝がん細胞のEMT化とMT1-MMP発現活性化、PD-L1およびPD-L2を介する免疫監視機構からのエスケープ、EphA2シグナル変換 、Mint3/HIF経路の活性化の相互連関を解析する。2)PDGF-C-Tg/TP53-/-マウスから確立した肝がん細胞におけるMMP14などの遺伝子発現を確認し、上皮間葉転換プログラムとMT 1-MMP、免疫チェックポイントとの関連を解析しうるマウスモデルを作成する。3)MT1-MMPが制御するEphA2下流シシグナル経路を逆相蛋白質アレイ解析で網羅的に検討する。4)浸潤能の測定後に浸潤細胞および非浸潤細胞を分別回収てできる測定法の開発に成功している。EMT化した細胞を浸潤能によ り分別することが可能となった。本法を用いて、EMT、浸潤能、MT1-MMP依存性シグナル活性化の関係について解析する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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