研究課題
癌転移開始細胞(Metastasis-initiating cell, 以下MIC)は、原発癌に巣喰う微量な細胞集団で、癌転移を積極的に仕掛ける。「MICの制圧」は癌転移抑止に必須であるが、MICの特異抗原が不明である等、未解明な点が多い。我々は独自のスキルス胃癌株の正所性移植癌転移モデルの解析から「CD280がMIC特異抗原の候補」である予備知見を得た。この成果を基に以下の3点を目的に掲げる。①様々な癌種からMICを単離し、そのCD280をゲノム編集でKOし、癌転移におけるCD280の生物学的意義を解明する、②CD280がin vivoで癌転移抑止の分子標的と成り得るか否かを検討する、③癌患者の血中循環癌細胞を対象にCD280が癌転移予測のバイオマーカーと成り得るか否かを検討する。以上の3点を明らかにするところまでを目的とする。昨年度から今年度前半までの検討で、各種癌患者組織からMICを単離することに成功した。前立腺癌や胃癌を中心に、術後癌組織を出発材料にして、MICを単離出来た。MICを単離後、以下の検討を行った。すなわち、ヒト前立腺癌MIC又はヒト胃癌MICにおけるCD280の発現上昇を見出したので、ゲノム編集手法にて、CD280ノックアウトを試みた。数種のガイドRNAの候補を設計し、ゲノム編集ベクターに組込む実験をし、ゲノム編集で有効性を示す1種のガイドRNAを決定することに成功した。今後、CD280をノックアウトしたMICを用いて、CD280の癌転移における意義解明を行う予定である。また、患者癌臨床検体におけるCD280の意義解明のため、患者癌組織や血液検体採取の体制づくり(倫理委員会等の審査を含む)も合わせて実施した。
2: おおむね順調に進展している
本年度(平成29年度)において、おおよそ研究実施計画書に記載した実験をひとつずつ実施した。粘り強く条件設定が必要な実験もあったが、それらを何とかクリアし、研究課題を軌道に乗せて、遂行している。
平成30年度においても、研究実施計画書に記載した内容になるべく従い、実験を進めていく予定である。臨床検体におけるCD280の意義解明やCD280陽性MICのシングルセル解析など、科学的興味が高い実験を予定している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
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