研究課題/領域番号 |
16H04704
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
富岡 佳久 東北大学, 薬学研究科, 教授 (00282062)
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研究分担者 |
塚本 宏樹 東北大学, 薬学研究科, 助教 (70423605)
松本 洋太郎 東北大学, 薬学研究科, 講師 (90420041)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 修飾核酸 / CD73 / LC/MS |
研究実績の概要 |
Ecto-5’-nucleotidase/CD73の分泌型組換タンパク質を安定発現するCHO細胞を無血清培養し、CD73に付与した6×Hisタグを用いて順化培地からアフィニティー精製を行った。CBB染色によって単一バンドのCD73組換蛋白質として精製することに成功し、AMPを基質とする5’-nucleotidase活性を我々が開発したLC-MS/MSによる修飾核酸測定法で確認できた。次に、この蛋白質の修飾核酸に対する酵素学的特性の解析を進めたが、反応系に添加したヌクレオチドがLC-MS/MSによる測定を妨害していることが判明し、定量解析が困難であった。この問題点を解決するため、マラカイトグリーンを用いたリン酸比色定量によるCD73酵素活性測定法の開発に着手し、AMP、GMP、CMP、UMPに対する酵素学的パラメーターを算出することに成功した。CD73は各ヌクレオチドに対して類似したKm、Vmax、Kcat値を有することが示唆された。 昨年度開発したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉分析法を血液試料に応用し、修飾核酸の動態解析に取組んだ。しかしながら、試料マトリックスによるイオン化抑制による影響が大きく、得られた血中修飾核酸測定値の信頼性が低いことが明らかになった。LC-MS/MSによる定量分析において、安定同位体標識化合物を内部標準物質として用いることがイオン化抑制の補正には有効である。現在、安定同位体標識修飾核酸の入手と有機合成を検討している。 昨年度作製した担がんマウスに加え、MC38大腸がん細胞株を入手し、新たに担がんマウスを作製した。MC38とMCA205担がんマウスにはPD-1/PD-L1阻害療法が部分奏功し、修飾核酸動態を解析するための有用なモデルマウスとして使用できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉分析法が、血液等の生体試料やヌクレオチドが添加された反応液等を測定する場合、マトリックスによるイオン化抑制の影響が大きく、修飾核酸の体内動態解析やCD73の修飾核酸特異性を解析する実験にそのままでは応用できないことが判明し、実験に遅れが生じた。このような現状において、CD73酵素活性評価にはマラカイトグリーン比色定量法を応用して問題を解決し、また、96穴フォーマットによる分光学的測定を可能にしたことから、LC-MS/MS測定法よりもむしろ迅速かつ簡便な測定ができるような分析環境を確立した。その結果、実験進捗状況の遅れを一部は取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
CD73酵素活性の評価にはマラカイトグリーン比色定量法の確立により、既存の問題解決だけでなく、酵素活性測定法のスループット性に大きなメリットを得ることができた。今後、96穴プレートを用いてCD73の修飾核酸特異性について解析を進める。 一方、生体試料中の修飾核酸測定にマラカイトグリーン比色定量法は適用できないため、LC-MS/MSによるイオン化抑制の問題点を解決する必要があり、これが本研究のボトルネックとなっている。LC-MS/MSにおけるイオン化抑制の補正には分析対象物と物性がほぼ同一な安定同位体標識化合物を内部標準物質として用いることが有効であるため、安定同位体標識修飾核酸の入手と有機合成を進め、この問題点の解決に着手している。この問題点が解決された後、作製している担がんマウス血液試料などの修飾核酸動態の解析を進めていく。
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