本研究では、修飾核酸の標的メタボロミクスによる、がん免疫病態を診断する腫瘍関連バイオマーカーの探索・同定と個別化がん免疫療法の新しい治療戦略への応用を目的とした。 アデノシン1リン酸、グアノシン1リン酸、イノシン1リン酸等のプリンヌクレチドに加え、シチジン1リン酸、ウリジン1リン酸がCD73の基質になることを示した。今年度は、これらヌクレオシド1リン酸によるT細胞抑制活性について、MHC-I、-II拘束性OVAペプチド特異的T細胞受容体組換マウスOT-I、-IIの脾臓細胞を抗原ペプチドで刺激し、各ヌクレオシド1リン酸の抑制効果を検討した。プリンヌクレチドのアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸は、OT-I CD8 T細胞、OT-II CD4 T細胞のOVAペプチド特異的T細胞増殖を濃度依存的に有意に抑制した。また、このT細胞増殖抑制はCD73阻害薬APCPで解消した。さらに、野生型マウスCD4 T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体との共刺激、あるいはPMAとionomycinとの共刺激で活性化した場合にもアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸によるT細胞抑制効果が認められ、これらヌクレオシド1リン酸がT細胞を直接的な標的にすることが明らかになった。一方、ピリミジンヌクレオチドのシチジン1リン酸とウリジン1リン酸はCD73の基質ではあるが、T細胞増殖に対する抑制効果は認められなかった。代表的な修飾ヌクレオチドであるN6-メチルアデノシン1リン酸の抑制効果を検討したところ、アデノシン1リン酸と同等かそれ以上のT細胞抑制活性が示唆された。
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