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2016 年度 実績報告書

癌特異的mRNA再スプライシング現象から探る遺伝子発現系の秩序維持と大規模破綻

研究課題

研究課題/領域番号 16H04705
研究機関藤田保健衛生大学

研究代表者

前田 明  藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (50212204)

研究分担者 恵美 宣彦  藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30185144)
白木 良一  藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (70226330)
藤井 多久磨  藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10218969)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード遺伝子発現調節 / スプライシング / mRNA / 癌 / 品質管理機構 / TSG101 / p53
研究実績の概要

(1)癌特異的TSG101再スプライシング産物の機能が判明
TSG101は蛋白質は、きわめて多種多様な細胞機能をもっているが、細胞増殖/周期の促進活性が癌に関連する。TSG101には癌特異的な異常スプライシング産物TSG101Del154-1054(以後TSG101Del)があり、以前より種々の癌で観察されてきたにも関わらず、その機能は長らく不明であった。最近、TSG101Del産物が、ユビキチン転移酵素(Tal)を競合阻害する事によって、TSG101蛋白質のユビキチン依存的分解から保護している事実がわかった。TSG101DelはmRNA再スプライシングによって生成するのだから、癌細胞ではmRNA再スプライシングでこの産物が増加しTSG101活性が高まっているに違いない。TSG101は細胞増殖活性がある事から、癌の増殖や悪性化との重要な接点が見えてきた。
(2)mRNA再スプライシング抑制因子候補の発見
癌細胞によってストレス依存性と非依存性の違いがあるが、p53発現上昇によりTSG101Del生成が抑制され、逆にp53発現ノックダウンによりTSG101Del生成が誘導される事がわかった。すなわち癌特異的なmRNA再スプライシング現象が、p53の制御下にある事が明らかになった。mRNA再スプライシング促進・抑制因子の探索は、対象がp53の下流にある因子群に絞る事ができる。一方、156種類のRNA結合蛋白質のsiRNAライブラリーを用いた網羅的ノックダウン実験を行い、1つの因子RX(仮称)のノックダウンがTSG101 mRNA再スプライシングを顕著に活性化する事がわかった。RX因子は、癌抑制因子として知られており、実際に正常組織では高発現し、進行癌では殆ど発現していない。よってRX蛋白質は正常細胞において異常なmRNA再スプライシングを抑制している極めて有力な候補因子である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

癌特異的mRNA再スプライシング現象を理解する上で、その制御因子(促進因子・抑制因子)を明らかにする事は、極めて重要である。mRNA再スプライシングが、癌抑制遺伝子の制御下にある事がわかり、その制御下にある因子の探索を計画していた。ところが、156種類のRNA結合蛋白質のsiRNAライブラリーを用いた網羅的ノックダウン実験を行ったところ、運良く、一つの因子RX(仮称)が明確に再スプライシングを抑制する事がわかった。
はたしてRXがp53遺伝子の支配下にあるかどうかは、今後の研究の課題である。しかし、mRNA再スプライシング抑制因子の有力な候補が見つかった事がブレークスルーとなり、当初の計画は、より早く進展している。

今後の研究の推進方策

(1)RX蛋白質がmRNA再スプライシング抑制因子であるかを検証: 正常細胞におけるRX発現をsiRNAでノックダウンして、mRNA再スプライシング(TSG101Del mRNA産生)が誘導されるかを調べる。逆に、再スプライシング活性が強い悪性度の高い癌細胞で、RX蛋白質を過剰発現させて、mRNA再スプライシングが抑制されるかどうかを調べる。
(2)RX蛋白質の発現がp53の制御下にあるかを検証: p53が高発現してTSG101Del mRNAが産生されない癌細胞(TW01など)で、RX因子のmRNA・蛋白質発現を調べる。逆に、p53が発現しておらず、TSG101Del mRNAが産生される癌細胞(Saos-2など)で、RX因子の発現も調べておく。RX発現がp53発現に依存している結果が得られたなら、p53ノックダウン及び過剰発現によって、RX因子が予想通りに発現制御されているかを確認する。
(3)RX因子のmRNA再スプライシング抑制メカニズムの解明: RX因子は、選択的スプライシングを変化させる事が知られている。mRNA再スプライシングのモデルであるTSG101 mRNAへのRX因子の結合が、mRNA再スプライシングの抑制に必要かどうかを、抗体を用いた免疫沈降後のRT-PCR、そして変異を導入したmRNAのスプライシング解析で明らかにする。また他のスプライシング因子との相互作用は、免疫沈降解析で調べる。
(4)RX因子はmRNA品質管理機構の鍵となっているか?: mRNA再スプライシングしない細胞と、そのRX発現をノックダウンした細胞を用い、TSG101 mRNA再スプライシングの根拠となる投縄状RNA産物を研究所内の次世代シーケンサーで大規模解析する(Lariat-Seqと命名)。もしRXノックダウン細胞で、大規模なmRNA再スプライシングが誘導されたなら、この仮説を支持する。

備考

研究室のホームページである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] A repressor candidate of cancer specific mRNA re-splicing: A key factor for splicing fidelity or mRNA quality control?2017

    • 著者名/発表者名
      T. Kameyama, K. Fukumura, K. Inoue, T. Hirose, A. Mayeda
    • 学会等名
      The 22nd Annual Meeting of the RNA Society
    • 発表場所
      Prague Congress Center (Czech Republic)
    • 年月日
      2017-05-30 – 2017-06-03
    • 国際学会
  • [学会発表] A repressor candidate of cancer specific mRNA re-splicing: A key factor for splicing fidelity or mRNA quality control?2017

    • 著者名/発表者名
      T. Kameyama, K. Fukumura, K. Inoue, T. Hirose, A. Mayeda
    • 学会等名
      2017 International Symposium on the 'Hallmarks of Cancer: Focus on RNA'
    • 発表場所
      Prague Congress Center (Czech Republic)
    • 年月日
      2017-05-28 – 2017-05-30
    • 国際学会
  • [学会発表] ヒト遺伝子の「無意味」な配列の「意味」を考えてみよう!2016

    • 著者名/発表者名
      亀山 俊樹, 芳本 玲, 福村和宏, 嶋田誠, Maria Kalyna, 前田 明
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県、横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] Cisplatin-stimulated cancer-specific mature mRNA re-splicing is under the control of tumor suppressor p532016

    • 著者名/発表者名
      T. Kameyama, Y. Amemoto, A. Mayeda
    • 学会等名
      The 21st Annual Meeting of the RNA Society / The 18th Annual Meeting of the RNA Society of Japan
    • 発表場所
      京都国際会館(京都府、京都市)
    • 年月日
      2016-06-28 – 2016-07-02
    • 国際学会
  • [図書] 実験医学特集号「coding RNAルネッサンス」2016

    • 著者名/発表者名
      片岡 直行, 前田 明
    • 総ページ数
      143
    • 出版者
      羊土社
  • [備考] 藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 遺伝子発現機構学研究部門

    • URL

      http://www.fujita-hu.ac.jp/~gem-1/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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