研究課題
悪性中皮腫のゲノム異常の主体であるがん抑制遺伝子の変異に着目して研究を進めた。特にNF2遺伝子が制御するHippoシグナル伝達系に係るLATS2遺伝子について検討を進めた。ゲノムワイドプール型レンチウィルスshRNAライブラリーを用い、前年度までに合成致死表現型を示す遺伝子をスクリーニングした。その中で有力候補と考えられた候補遺伝子AはRNA代謝経路(NMD経路:ナンセンス変異依存分解系)およびテロメア制御に係ることが報告されていた因子であったため、どちらの経路が合成致死表現型に関わるかを検討した。その結果、NMD経路に同じく関与する別の因子は候補遺伝子Aとは異なりLATS2変異とは合成致死表現型を示さなかったため、候補遺伝子Aはテロメア制御を介して合成致死表現型に関わることが示唆された。これらの結果はLATS2と候補遺伝子Aが共にテロメア制御系に関与し、それらが同時に破綻することにより細胞致死が引き起こされることを強く示唆した。また、shLATS1/2によるLATS1/2ノックダウン正常中皮細胞株において候補遺伝子Aをノックダウンすると細胞死が起きるが、その際、ヒストンH2Aのリン酸化やp53のリン酸化が観察されたため、DNA損傷が細胞死の原因の一つであることが示唆された。また、Hippo経路の転写共役因子の一つであるTAZの変異株においても候補遺伝子Aのノックダウンで合成致死の誘導が認められた。本研究によって、LATS2変異を有する悪性中皮腫において、候補遺伝子Aの発現抑制による合成致死誘導機構の一端が明らかにされた。以上の結果により、悪性中皮腫に対する合成致死を用いた治療戦略が極めて有望であることを立証した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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